トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.37

航空機の道先案内人。空の安全を守る航空管制官

1日数千機の航空機が飛び交い、「過密」と言われて久しい日本の空。航空管制官は、地上からいわばその交通整理をし、パイロットと共に安全なフライトを実現する“空の番人”です。2022年7月放送開始のドラマ『NICE FLIGHT!』では、そんな航空管制官とパイロットの恋愛模様とともに、プロフェッショナリズムや仕事の醍醐味が描写されています。今回はドラマの視点を借りて航空管制官の仕事に迫るとともに、現職の方からよりリアルなお話についてうかがいます。

Angle B

後編

仕事へのプライドで通じ合える

公開日:2022/9/6

監督

宝来 忠昭

ドラマ『NICE FLIGHT!』の制作過程で、航空管制官という仕事の魅力に引き込まれたという宝来監督。その仕事ぶりをリアルに描くことで、取材協力してくれた管制官たちの仕事への想いを受け取った作品にしたいと意欲を持っています。ドラマ監督という仕事とその醍醐味、宝来監督自身の仕事への想いについて語っていただきました。

『NICE FLIGHT!』は航空管制官の仕事をリアルに描いたドラマとしても好評です。

 今年の1月くらいから、航空局さんと日本航空さんに取材を始めましたが、管制官やパイロットの皆さんにお会いするたび、そのプロフェッショナルな姿勢に胸アツになりました。「なんちゃって」にしてはいけないという思いが芽生えましたね。仕事と恋がテーマのドラマなので、シーンを分けるとすれば仕事パートとプライベートパートとなりますが、前者については可能な限りリアリティを追求しようと決意しました。明白にドラマなのですがドキュメンタリーさながらと言いますか、ドキュメンタリーの中にフィクションの要素が入っているかのように撮りたいと思いました。その決意によりハードルを自分で上げたわけで、後々大変になっていくんですが、1話目を見て「リアルを追求してよかったな」と思いました。

管制シーンの撮影では航空管制官が監修に入ったとか。

 管制官のカッコよさをドラマに反映させたくて、管制シーンの撮影時はその日都合のつく管制官の方に現場に立ち会っていただいています。「この風の話をするときは、ここの画面を見て」とか、具体的な視線の向きなどをアドバイスしてもらっています。私の隣にいてもらい、1カットごとに私が管制官さんをチラッと見て、頷いてくれたらスタッフに向かって「OK!」みたいな(笑)。管制官のハウツーものではないので、あまり凝りすぎないようにしていますけど。

ドラマの動作と実際の動作とで違うところもあるのですか。

 ドラマでは、カッコよく見せる時はあまり視線が動かない方がいいんです。しかし、管制官は視線が止まっている時があまりない。ドラマの決めポーズ作りと、危険につながる動作はないはずの現実との相容れなさ。そこをなんとかうまい塩梅で撮れた瞬間は、充実感があります。
 リアルの追求のために協力してもらっているのでそこは守りたいし、ドラマの面白さも追求したい。「このくらいの見方ならいいですかね」と、現場で管制官の方と相談するのは楽しいです。だから、少なくとも管制シーンについては、制作現場で生まれた信頼を踏み越える絵作りはしたくないと思っています。

宝来さんが監督を目指すようになったきっかけを教えてください。

 高校生の頃、岩井俊二監督の「Love Letter」という映画を観て感動したのがきっかけです。映画監督になりたいと思い、「監督になりたい」と言い続けていたら道が拓けて岩井監督とも知り合うことができ、この業界に入って監督になれました。福岡の田舎のサラリーマン家庭に育ったので、「監督になりたい」なんて言うやつは周りに一人もいませんでしたが、初志貫徹。同級生にも「昔から言ってたけど本当になれたね」と言われました。

ドラマの監督とはどういうお仕事でしょうか。

 端的に言えば映像を決める人。一つひとつのシーンを撮影しながら進めていく制作現場で、このシーンはこれでよしと判断しOKを出す人です。
 また、『NICE FLIGHT!』で改めて、いろいろな人の想いを映像にするのが監督なんだなと思いました。航空局や航空会社のプロフェッショナルな方々がどういう想いでその仕事に就いて、どれほどのプライドを持って日々働いているかに触れて魅力を感じたのですが、それを私は受け取ったというだけではダメで。そこから、どこまでこだわるか、あるいはここはこだわらないか、と映像に変換していくのが仕事です。最終的にプロの仕事の誇りと情熱が伝わる作品にできたら、ご協力いただいた皆さんの想いに応えたことにもなると考えながらやっています。同時に、プロデューサーや脚本家、スタッフ、俳優さんたちの想いも極力受けとめたいと思うので、あふれるものを整理しながら頑張っています。そこがやりがいであり、醍醐味だと感じています。

監督として、ドラマ「NICE FLIGHT!」の魅力を語っていただけますか。

 空の仕事のリアルさはもちろん、大人の恋愛ドラマとして楽しんでいただきたいです。大人の恋愛には、働いているということは切り離せない部分です。このドラマの“ひと聞き惚れ”というテーマは、個人的に好きな「距離感」という言葉で解釈しました。声から繋がった管制官とパイロットが、物理的な距離感、心の距離感を、回を重ねるごとに縮めていく様子を伝えていきたいです。仕事もプライベートも含めて丁寧に作っていますので、「こういう人たちがいるんだ」「こういう仕事をしている人たちがちゃんと恋愛をしてるんだ」と、面白く感じてもらえたら。管制官のドラマはあまりないですから、そこに関心を持ってもらうのもうれしいですし、いろんなとっかかり要素があるドラマだと思います。

最後に、『Grasp』の読者にメッセージをお願いします。

 今回、管制官やパイロットの方に何人もお会いしましたけれど、誤解を恐れずに言うと、自分と似ている部分があるなと思いました。想いを大切に仕事をしているところです。管制官は公務員のイメージもあってちょっとお堅い人かと思ったんですが、話していくとすごくわかり合えました。どんな仕事であれ、その仕事を始めた想いを大切にやり続けることが、仕事へのプライドを育てる。そして、お互いに仕事へのプライドがあるからこそ、本気で仕事をしている者同士で通じ合えるのだと思います。「監督になりたい」と思い続けて監督になって、ずっとその想いを大切にやってきたつもりでしたが、今回も出会った人たちと通じ合えて一緒に作品を作ることができ、「続けてきてよかったな」と思いました。

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