トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.27

復興の先へ!震災10年のまちづくり

岩手、宮城、福島の3県を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生から10年が経過する。2011年3月11日、震災に伴う津波や建物の倒壊などで死者、行方不明者、関連死を含め2万2000人以上が犠牲になり、街並みはがれきの山へと一変した。しかし、この10年間で住宅や道路、鉄道などのインフラ整備が進み、被災3県は浸水地域の1万8000戸の宅地整備を終えている。未曽有の被害でゼロから始まったまちづくりを振り返り、復興の現在地と未来を探る。

Angle A

後編

もっと有名になって、被災者の励みに

公開日:2021/3/11

俳優

横田 龍儀

未曽有の被害をもたらした東日本大震災からの復興は、いまだ道半ばだ。さらに2月13日深夜には震度6強の地震が福島県などを襲い、10年たった今も震災が続いていることを浮き彫りにした。高校1年で被災し、避難生活を経て芸能界入りを果たした横田龍儀さんにとって、この10年はあまりにも濃密だったはずだ。彼にとって芸能人であることの意味は?そして被災者の1人として、被災地の現状はどう映っているのだろうか。

ジュノンボーイ審査員特別賞をきっかけに芸能界入りして、2・5次元ミュージカル『刀剣乱舞』の物吉貞宗役など、俳優としても活躍中ですね。

 家族をはじめ、周囲の人は本当に喜んでくれています。なかでも一昨年の大みそかに、刀剣男士としてNHK紅白歌合戦に出演させてもらったときは、川内村では防災無線を使って、村の人に告知してくれたそうです。「被災者でも、頑張ればこれだけできる」ということを示して、少しでも勇気づけられているとしたら嬉しいです。
 ただ、自分の芝居がうまいとは絶対に思わないし、僕自身、いわば毎日が挫折の連続です。そんなとき、ファンからの「勇気をもらった」という手紙や、全国の人からいただいた激励の言葉を思い返したり、大切に保存している両親からの手紙を改めて読んだりしてメンタルを保っています(笑)。今はまだ、僕が周囲から励まされることが多いので、もっといろいろな作品に出演して、たくさんの人の目に触れるようになりたいです。そして、もっと芝居の演技力を上げて人の心を動かせるような存在になりたいです。

地元のTV番組で被災地をはじめ、全国を歩きました。印象に残ったことを教えてください。

 福島中央テレビの「ゴジてれChu!」という番組で、全国を歩くコーナー「日本縦断 龍儀の歩く旅」を担当させていただきました。その際、宮城県内だったか、ある被災地を訪れたとき、震災から約5年が経過するのに、土をもって平らにする程度にしか復興が進んでいない場所に遭遇しました。自分のイメージでは、もう新しい家がどんどん建っていて、震災の傷痕もわからないぐらいになっている…と思い込んでいたのでショックでした。被災者である僕ですらそうなのだから、現地を知らない人たちはなおさら、被災地の現状などわからないでしょう。だから、それを伝える責任が僕にはあると感じました。
 また、別の被災地では、流された家の跡で手を合わせている女性に会いました。聞けば、夫と息子さんを津波で流されたと。生きる目標を失ってしまうぐらい辛いことだと思うのですが、その女性は「2人の分まで、強く生きるから、あなたも強く生きてね」と逆に励ましてくれたのです。そのあと、熊本地震の被災地も訪れましたが、みなさん、自分の辛さを見せずに、逆に「頑張ってね」と、口々に僕を励ましてくれました。そういう人たちの力になれるよう、もっと有名にならなければ…と思っています。

【地元テレビの日本縦断企画で被災地を歩く】

福島県内には今でも帰還困難区域があるなど、震災から10年が経過してもなお、「被災」が続いています。

 10年が長いのか短いかは人ぞれぞれだと思いますが、いまだ震災が終わっていないことは間違いありません。僕自身、今でも緊急地震速報を聞くと、あの日の記憶がよみがえり、とても怖いです。実際、2月13日深夜に地震に遭ったとき、10年前のことを思い出して、しばらく足の震えが止まりませんでした。まずは全国の人にこうした現状を知ってもらうことが一番だと思います。もちろん、震災を思い出したくないという人もいますが、亡くなった方のことを忘れてはいけないし、それを後世に語り継ぐのが僕たちの使命だと思っています。
 それといまだに風評被害があります。川内村の食べ物でも、放射能を怖がっている人がいるのですが、検査も厳しくやっているので安全だとわかってほしいです。川内村はイワナがとてもおいしくて、川魚ですが、刺し身でも食べられます。あと、意外とラーメンもおいしいです。僕がもっと知名度を上げて、僕を好きになってくれた人に、僕の出身地である川内村、福島県、そして東北に興味を持ってもらい、被災地の実情、その〝現在地〟を知ってもらいたいです。

【2月13日の地震の直後の横田さんは思いを綴った】

※横田さんのTwitterから

最後に読者にメッセージをお願いします。

 人ぞれぞれに過去があり、思いがあって生きていると思います。そのなかで、みんなが支え合って生きていける社会にしたいです。僕自身も努力して、みなさんを支えられるような存在になれるよう頑張りますので、応援をよろしくお願いします。
 それと、川内村はとても自然が豊かです。時が止まったような感覚になり、深呼吸するだけでストレスが発散できるような素敵な場所です。新型コロナウイルスの感染拡大もあってテレワークも推奨されていますが、川内村はその意味でもうってつけで、ストレスフリーな環境です。(了)

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