トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.17

既存住宅の活性化が日本を救うか

全国で約850万戸と推定される空き家。依然として増加傾向にあるものの、空き家をリノベーションして住んだり、民泊やシェアハウス、イベントスペースなどとして活用したり、地方の既存住宅を利用して都心と地方の二拠点居住を楽しんだりするなど、いろいろと新たなニーズが生まれている。また、街づくりや地域の活性化を進めるうえでも、既存住宅の活性化はカギとなる。住まいとしてのほか、趣味や仕事の場として活かしていくことも考えられる既存住宅の資産としての価値を高めていくには、リノベーションによる大胆な工夫や仕掛けを行うことが有効だ。

Angle A

後編

リフォームの自由度を高める環境を

公開日:2020/4/17

タレント

ヒロミ

近年、「住宅は作って壊す」社会から、「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」社会への転換を目指す動きが広がっている。こうした動きは既存住宅の品質向上につながり、市場の活性化にもプラスに働くといえよう。既存住宅を長く使い続けるために求められる視点やアイデアとは何だろうか。

住宅を長く大切に使い続ける文化とはどのようなことでしょうか?

 ヨーロッパなどで街を歩くと、石造りの古い家が目に付きます。石造りの家は、頑丈で何百年単位で持ちます。このため、ヨーロッパなどの海外では、家をリフォームしながら、長く大切に使い続けることが一般的になっています。暮らす人のライフスタイルに合わせて、リフォームを楽しみながら使っていくのです。
 日本の住宅は、昔から木造家屋が多いので、こうした文化は根付いてきませんでしたが、木造家屋も寿命が長く持ちますので簡単に壊してしまうのは、とてももったいないことです。

古民家をカフェにして再生するリフォームも手掛けられましたね。

 僕がリフォームしたのは、築100年超の住宅です。土間を利用してカウンターを作り、カフェにしました。そういう場所は、これから民泊向けにも使えますね。古い住宅については、そういった使い方がどんどん広がっていけばいいと思います。また、インテリアのランプは瓶で手作りしました。ランプや明かりに関しては、オレンジ色にすると大抵は格好よく見えます。特に若い人に好評です。

【さまざまなメディアでDIYにかかわる情報を発信するヒロミさん】

※公式YouTubeチャンネル「Hiromi factoryチャンネル」提供

リフォームを通じて住まいへの興味を持つことができるでしょうか?

 家には、そこで暮らす人それぞれの暮らしがあります。例えば、賃貸住宅で同じ間取りだからといって、そこで暮らす人みんなが同じ生活をしているわけではないでしょう。だから、みんながみんな同じ家、ということは自然ではないと感じています。
 賃貸住宅でも、借り手のライフスタイルに合わせて、もっと楽しく住めるようにしたらいいと思います。そこで暮らす人がもっと自由に自分の思いを反映できるような部屋をつくることができるようにするのです。そうすれば、家に対する意識も変わってくるでしょう。
 僕はテレビ番組などで使うスタジオのセットを自分がリフォームする時のヒントにしていますが、実際に暮らす部屋もセットのようにすれば楽しいかもしれません。
 また、賃貸住宅へセットそのものを持ってきたらどうでしょうか。セットを部屋の壁4面に持ってきたら面白いし、3面でも雰囲気が変わります。壁に好きな色を塗ったり、使い勝手のいい場所に穴を開けたり、自由に楽しめると思います。

ご自身がお考えになる既存住宅の良さとは?

 リフォームする時に既存住宅の場合は、もともと建っているものからイメージするため、間取りを含めて自分の好みに変えやすいという良さがあります。完成後の自分の生活もある程度、想像しやすいでしょう。 しかし、一軒家をイチから作るのは大変です。住宅に自分の好みを反映させる場合、できあがりをイメージしにくい分、新築の方が難しい部分があります。いざ完成してみると、間取りのイメージが違う場合もあります。新築の場合は、イメージが何もないところからつくりあげるので、こうした問題が起こりやすいのです。
 また、実際に生活するうえでは、電気のコンセントの位置も大切ですが、新築では電気の配線一つとっても、考えていたイメージと違う場合があります。既存住宅をリフォームする場合は、電気の配線も壁をはがせばすぐにできます。

ご自身がイメージする理想の既存住宅像を教えてください。

 現在、日本では人口が減って空き家が増えているという問題がありますが、例えば、若い世代向けには、地方の使われなくなった既存住宅を自由に別荘として使うことができるようなシステムができたら面白いですね。このような空き家を借りるにしても、買うにしても、もっと気軽に自由に別荘として使えるような仕組みがあれば、空き家や既存住宅に対する見方や考え方が変わってくると思います。
 海外では、年齢を重ねた人たちが温暖な地域に別荘を持つようなライフスタイルがありますね。もちろん、日本でも別荘を持って生活している人もいますが、若い世代が気軽に別荘を利用できるようになると、そこから新たなライフスタイルが生まれ、地方の空き家解消策につながる動きが広がってくるかもしれません。多くの人が、こうした空き家、既存住宅をもっと気軽に借りたり買ったりして、リフォームやリノベーションを施して自分の生活を楽しめるようになると面白いと思います。(了)

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