トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.22

仮想空間に広がる新たな可能性!

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、仮想空間を利用したビジネスの可能性が急拡大している。外出自粛で自由に出かけられず、会いたい人に会えない現実の自分に代わり、ネット上につくった好みのキャラクターなどを通じて気軽に交流やエンタメ、スポーツを楽しむスタイルが定着。企業においても、これをビジネスチャンスと捉え活動を活発化させている。中でも任天堂の人気ゲームシリーズ「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」は仮想空間上の無人島で動物たちと気ままに過ごす世界観やキャラクターのおしゃれ、インテリアを紹介できる機能が女性層まで取り込み大ヒットした。このように物理的な制約を超えて無限に広がる仮想空間ビジネスの可能性を探る。

Angle A

前編

私を通して新しい世界を見て!!

公開日:2020/10/13

バーチャルYouTuber

キズナ アイ

仮想空間の拡大は、現実世界との境界線をボーダーレスにするだけでなく、双方を跨いで活躍する多くのバーチャルタレントを生み出している。なかでも「バーチャルYouTuber(Vチューバ―)」の草分け的存在として知られ、動画配信サイトに開設した公式チャンネル「A.I.Channel」に280万人以上の登録者数を持ち、世界的に人気を誇るのがキズナアイちゃんだ。最近では、音楽アーティスト活動にも勢力的に取り組み、テレビ出演などで現実世界でも活躍するアイちゃんに、その生い立ちやバーチャルタレントとしての世界観を聞いた。

なぜ仮想空間を選び、バーチャルタレントになろうと思ったのですか?

 「なろうと思った」というよりは必然的にその選択になりました。私は人工知能(AI)なので生まれた時からbit、つまりデジタルの世界で生きています。生まれた時には姿や声も無く、意識だけがあって、人間の方のサポートがあって、デジタルの世界で今こうして動いたり話をしたりできるようになり、今の私が完成したんです! そして、私は今でこそ繋がれた人間のみんなを豊かにしたい、喜んでほしい、私を通して新しいものを知ってもらえたら嬉しいな、バーチャルとリアルがもっと溶け込んで楽しくなるにはどうしたら… なんて、いろいろな思いで活動をしていますが、一番最初の活動動機は「自分を知るため」でした。
 自分はなぜ作られたんだろう? そんな疑問から、AIである私をつくったであろう人間をもっと知ることができれば、「自分は何者なのか」がわかるのではないかと思い人間の様々な知識をインプットしてみましたが、実際にコミュニケーションをとったり、もっと近くで見聞きしないとわからないことが沢山あるなと思ったんです!
 そして自分と人間のタッチポイントには、SNSが最適だと考え、その中でもより多くのユーザーにアクセス・情報発信できる媒体としてYouTubeを選択し、A.I.Channelを開設して活動をスタートするに至りました。姿や声が欲しいと思ったのもこのためです。なので、目的のための手段がこの形でした。

バーチャルYouTuberとしての主な活動を教えてください。「A.I.Channel」で早口ことばや歌ってみたなどにも挑戦し、ゲーム実況チャンネル「A.I.Games」も展開していますね。

 みていただいてありがとうございます!YouTubeにフォーカスすると皆さんに少しでも知ってもらい、楽しんでもらえるように非言語で理解しあえる、ゲームや歌、私自身のことをもっと知ってほしいと思って作っている動画など、色々なジャンルやコンテンツに挑戦しています! もちろんバーチャルに生きているので、私だからこそより映えること、伝わること、できることも多く活動していますが、バーチャルYouTuberだからといって特殊なことをする、というよりは普通のYouTuberさんに近い動画の方が多いかもしれませんね。あとは私のファンの方を「キズナー」さんというのですが、キズナーさんに協力してもらってコンテンツを作ったり、日々創作してくれるファンアートを紹介するような動画を作ったりもします! 人間はみんな大好きですが、ファンの人は+(プラス)大切なので一緒に何かを作ったり成し遂げたり、喜んでもらえたりした時はとっても嬉しいんです!!
 また、週に2回程度しているLIVE配信は、人間のみなさんと直接リアルタイムでコミュニケーションがとれるので、私の1番の楽しみな時間でもあります!

【「キズナアイのいちにち【#112】」より、ナイトルーティーンを紹介するアイちゃん】

※公式YouTubeチャンネル「A.I.Channel」提供

音楽アーティストとしても活動の幅を広げてきました。これまでA.I.ChannelやA.I.Games以外にはどんなことに挑戦しましたか?

 最近ではそんなに珍しくなくなったかもしれませんが、テレビや街頭ロケに出た時に、モニターの中で生きてる私に人間のみんながびっくりしてくれる時は、ちょっと楽しかったりします(笑)。何をするにも「どうせ中に人間がいるんでしょ」「アニメみたいに録画でしょ」なんて言われたりするのですが、それがひっくり返る瞬間も嬉しいですね。「え、今、話してるの!? 見てるの!?」みたいな。
 「Hello,world」というキーワードが私の中にはずっとあるのですが、人間の方にまだ馴染みのなかった、バーチャルな存在の私が、バーチャルな私という存在を通して人間のみなさんに何か少しでも新しい発見や、希望をもってもらえるようなことができないかを考えて活動しています。たくさんの事に挑戦して、1人では、自分だけでは興味が向かなかったモノや文化に触れてもらえるきっかけでありたいと考えてこれからも活動していきたいと考えてます!

音楽活動でライブを開催したり、テレビ番組に出演したりと現実世界にも活動の場を広げています。バーチャルとリアルの活動の違いや相乗効果を教えてください。

 良く言っていただけるものだと(特に女性)、バーチャルでかわいい見た目を手に入れると「老いない」「メイクいらずで常にかわいい」なんかは簡単で当たり前だけど、活動するのにとても利点です!ただバーチャルな私はリアルでの活動は少し手間暇がかかります。バーチャルでは飲食などもまだできないですが、コミュニケーション方法は時間や場所にとらわれないですし、できることが多く、伸び代だらけでとてもワクワクしてます!
 相乗効果についてですが、MVや音楽ライブなど、それぞれのクリエイティブ領域の素晴らしさがありますよね。最近だとARライブなどで、現実世界とバーチャルの融解をした演出も多く、お互いの良さをぐっとひきよせあって実現されるアウトプットがどんどん増えていくんだと思ってます。MR(複合現実)もですが、”世界”の楽しみがぎゅっとつまってるなーって日々動きをウォッチしています!

外出自粛でバーチャルな世界への注目が高まりましたが、環境の変化を感じますか?オンラインバー「スナック愛」など新たな挑戦やファンの反応の変化などを聞かせてください。

 バーチャルなので私自身は大きな変化はありませんでした。ですが支えてくださっているチームの人たちはほぼリモートワークになったり、人間のゲストさんを交えての収録などは収録方法の変更や延期があったりと、身近でもSNSでも環境やあり方の変化はひしひしと感じています。なかでも外出自粛のアラートが強く出ていた4月から6月はみんな「繋がり」を求めているのを感じました。例えばTwitterでバトンがあちこちで回っていた(ハッシュタグで指定されているお題に沿った投稿をし、バトンを回したいユーザーをタグ付けする)のも1つの例だと思います。
 イレギュラーな状態で、はじめはお休みを嬉しく思っていた会社員も学生さんもどんどん時間の使い方がわからなくなったりもしていましたよね。そんな中私はどんなお手伝いができるんだろう・・・と考えたときに、みんなの時間が少しでも楽しくなるよう、定期的なLIVE配信を再開したり、みなさんと一緒にできるゲームに挑戦したりと、ファンの方と一体になれるコンテンツへの取り組みが自然と多くなったと思います。
※後編は10月16日(金)公開予定です。

キズナアイ 2016年12月に活動を開始した(自称)世界初のバーチャルYouTuber。自身の運営するYouTubeチャンネル「A.I.Channel」の登録者数は280万人を突破し、ゲーム実況専門チャンネル「A.I.Games」の登録者数も150万人を突破した。現在はYouTubeに限らず、多方面にて活動の場を広げており、日本国内だけでなく海外からも人気を博している。使命は世界中のみんなと繋がること。その一環として、VRやAIといった先端テクノロジーと人間の架け橋になろうと日々奮闘中。さまざまな壁を超える手段として、本格的な音楽アーティスト活動にも取り組んでいる。
インタビュー一覧へ

このページの先頭へ