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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.23半島は日本の台所!

公開日:2020/11/27

B

[ 後編 ]

観光は点から旅行者が周遊する面に

津軽海峡マグロ女子会青森側とりまとめ役島 康子

半島地域は豊富な自然の魅力が多くの人を惹(ひ)きつける一方、交通アクセスの悪さが課題に挙がる。青森・下北半島は海に囲まれるうえ、公共交通機関が脆弱なため、特に冬季は陸路の移動も難しくなる陸の孤島とも言える。新型コロナウイルスの影響で移動への心理的な制約が依然と大きいなか、交通の不利を抱える地域をどう活性化していくのか。

2014年には「津軽マグロ女子会」を設立しましたね。

 立ち上げのきっかけは北海道新幹線の開業です。北海道側とりまとめ役である松前町の温泉宿「矢野」の女将(おかみ)とはまちづくりのフォーラムなどを通じて、もともと知り合いでした。大間町も松前町もマグロ漁が有名で、お互いに新幹線の最寄り駅から2~3時間もかかる場所にあります。この離れた地にどうにか人を呼び込もうと頑張っているところに共感し、「いつかマグロを活用して、ぶちかまそう」と話し合っていました。
 2016年の新青森~新函館北斗駅の開業が迫るなか、「新幹線という大動脈が通るなら、周辺にも毛細血管のように人の流れを作らないと小さな町村が死んでしまう。」という危機感が高まり、海峡を囲む地域にいる意欲的な女性に声をかけて設立しました。行政組織はとかく縦割りや上下関係の縛りもあって意思決定に時間が掛かりますが、女性はしなやかに動けるので風穴があけられるのでは、という期待もありました。

町外に活動を拡大した理由を教えてください。

 町おこしに取り組んでいると、行政区の壁にぶつかることが多かったんです。町や村に(物理的な)境界線が引かれているわけではないので、町おこしや観光振興は横断的な連携なくしてあり得ません。しかし、行政主導のPR活動は地域別の縦割りで、(マグロなど)テーマ別に連携することが難しい。
 津軽海峡マグロ女子会が2016年から開いている「マグ女のセイカン♡博覧会」では、メンバーのいる約20カ所で地元の魅力を伝えるイベントや体験プログラムを実施します。同時多発的に開催することで、それまで「点」であった観光を、マグロのように各地を回遊する「面」に広げたいと考えました。5回目の今年は新型コロナの影響で規模を縮小しましたが、徐々にファンが増えているので、いつか「マグ女のおかげで観光客が増えた」といってもらえるよう続けていきたいと思います。

【津軽海峡マグロ女子会のメンバーとマグ女ポーズを取る島さん(左側から2人目)】

※津軽海峡マグロ女子会提供

新型コロナの影響で観光振興が難しいなか、どんな取り組みを実践していますか。

 とにかく動きを止めず、いまできることをやろうと思いました。今春には「マグロ一筋」のマスクを手拭いから手作りしたり、クラウドファンディングで妄想旅行を企画したりしました。また、オンラインでの町歩きツアーは、参加者に事前に大間マグロを宅配し、動画で仲卸に解凍のコツを解説してもらうなど工夫を施し、商品として仕立てていきたいと考えています。
 大間は地理的に気軽に訪れられる町ではないので、オンラインの体験は観光の前段として気持ちを高めるツールとして絶対に必要になると思います。新型コロナが収束しても定着すると思いますし、例えば海外からツアーに参加してもらうことで、インバウンドへの展開も考えられるのではないでしょうか。
 また、下北半島の奥薬研(おくやげん)地区にはヒバやブナなどの森林に彩られた渓谷があります。近隣には下風呂温泉もあるので、森林の自然を感じながらウオーキングして、ミネラル豊富な海藻を中心とした料理と温泉でのデトックスを提供するヘルスツーリズムを開発してきました。新型コロナで屋外の体験が改めて注目されているので、来年から本格的に売り込みを始めようと考えています。

下北半島の魅力を教えてください。

 個人的に下北半島はほぼ一つの「島」だと思っています。周囲の津軽海峡や太平洋、陸奥湾など海域によって、獲れる魚介類が異なるし、海藻は数キロ離れるだけで味が変わります。一方で、恐山という霊場があったり、酪農、高原野菜の栽培などもあります。本当に多彩なものが凝縮され、(本州から)独立してもいいと思うくらいだと思います。住民もいろいろな個性の人がいて、漁師でも大間は荒くれものが多いですが、隣村はおっとりしているなど違いがあって面白いと思います。

最後に読者にメッセージをお願いします。

 「理屈こねる前にまんず動け」というのが私の行動原則です。自分で自らの姿を見ることはできないので、外にぶつけて返ってきた反応から判断するしかありません。だから、まんず動け。そして反応をみて軌道修正し、また投げかけてという繰り返しだと思います。失敗するのは当たり前なので、次にどうするかを考えてアクションを起こすことが本当のスタートになるのではないでしょうか。(了)