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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.27復興の先へ!震災10年のまちづくり

公開日:2021/3/19

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[ 後編 ]

関心を持ち続けることが被災地支援

独立行政法人 都市再生機構震災復興支援室長草場 優昭

節目の10年を迎え、これからの被災地はどうなるのだろうか。東京電力福島第一原子力発電所事故の原子力災害被災地での支援は継続される。津波被災地のハード面の整備は完了したが、今後は生活の基盤となる賑わいや産業の創出などに支援が移行していく。震災以前ではなく、それぞれの地域、時代に合ったまちづくりが求められている。何年経っても3月11日を忘れない。国民ひとりひとりが関心を持ち続けることが被災地支援となる。

今後はどのような事業を展開する予定ですか?

 国の第二次復興・創生期間を踏まえて、原子力災害被災地の復興支援を本格化していきます。2022年春に福島県では大熊町の大野駅周辺、双葉町の双葉駅周辺の避難指示が解除される予定ですが、それに向け、地域住民のみなさまが戻ってくる住宅や拠点の整備、賑わいの形成や産業創出など地域再生支援に力を入れていきたいと思っております。
 一方、津波被災地域では、基盤整備のハード面は終わりましたが、未利用地の活用などのまちづくり支援について、国と連携して被災自治体の支援をして行いたいと思っております。

いまだに生活基盤が確立されてない地域があると思いますが、生活を支えるような支援などはあるでしょうか?

 復興は基盤整備ができても、そこで生活するためには糧を得る生業が必要になってきます。生活していくための産業をどう復興に合わせ創生していくが大切になってくると思います。
「海に生きる」を復興計画のキャッチフレーズとして掲げている宮城県気仙沼市ではコンビニエンスストアや飲食店、大型スーパーの立地が進み、壊滅的被害を受けた商店街も鮮魚店、米屋、飲食店が戻り、活気が戻ってきています。日本有数の女川漁港を持つ女川町でも大半の市街地が被災しましたが、いち早く水産加工団地が整備され、水産業が再生しています。
 一方、原子力災害被災地では、今まさに、被災地域の住民のみなさまや新たに移住してくる方々の生活の基盤となる復興拠点の整備を進めています。あわせて、グループホームの立ち上げに向けての町の支援や、地域の名産であるキウイ生産の再生を通じての町民の交流の場づくりといった地域を再生する支援にも積極的に取り組んでおります。一日でも早く、被災地域の住民の方々が元気で仕事をし、子どもたちが学校に通うような環境に戻れるように、お手伝いしたいと思っています。
 震災以前に戻るというよりも、人口が減りつつある現状を鑑み、その地域の人口や産業など、それぞれの地域、移り変わる時代に合ったまちづくりが求められていると思っています。

【URが整備した市営住宅下和野団地の屋上にて(2018年2月)】

※UR都市機構 提供

福島県の原子力災害 被災地での今後の取り組みは?

 いまなお、帰還困難区域がある中で、生活サービス機能や住民コミュニティへの不安、または生活の糧となる働く場所の不安などから、多くの住民の方が避難生活を余儀なくされています。URでは現在、福島県の浪江町や双葉町、大熊町の復興まちづくりに関する計画の策定や事業実施の支援、地域再生の支援等を組み合わせたハード・ソフト両面で取り組んでおり、引き続き、復興まちづくりを支援してまいります。
 地域での生活基盤となる復興拠点では、大熊町の大野駅と双葉町の双葉駅の周辺で整備を進めていきます。両地区とも、特定復興再生拠点区域内に位置し、駅前の利便性を活かしたまちづくりを町と推進しているところです。
 また、まちづくり計画の検討や町の発注業務の支援も行っております。例えば、浪江町の浪江駅周辺の中心市街地の再生に向けたまちづくり検討の支援や大熊町の大川原地区での交流・宿泊・温浴施設や商業施設の整備等に係る町への支援を行ってまいります。
 一方、地域課題の解決支援についても取り組んでいます。具体事例としては、大熊町の関係人口の創出、町にきてもらうきっかけとなる「大熊ツーリズム」の企画支援や町内移動の共助型支援サービスの実証実験による交通システムの検討などの地域再生のソフト支援を行っております。URは、被災された町に寄り添って、引き続き復興支援に取り組んでまいります。

震災の記憶が薄れないよう、国民の目を被災地へ向け続けさせることが重要と思いますが、いかがでしょうか?

 被災地は地域住民の方々がそれぞれに賑わいや文化の継承などに取り組んでいくと思いますが、国民ひとりひとりが被災地の復興の状況に関心を持ち、「決して忘れない」思いを持つことが大切だと思いますね。そして、被災地の方々も全国に対し、現在の状況がどうなっているか、いまの課題は何なのか、ということを発信していくことが重要になります。この10年間、国民全体で被災地に非常に関心を寄せてきました。それが今後も継続していくことを望んでいます。
 現地での復興支援以外にも、URは2014年から被災地の写真や絵を募集して展示するフォトスケッチコンテストを開催しております。応募作品を見ますと、始めた当初は全体的に祈りや鎮魂をテーマにした、落ち着いた作品 が多くありましたが、徐々に復興の槌音や希望を表すような作品が増え、最近は笑顔が多くなっています。今年は「10年の歩み」という形で、これまでの応募作品の一部を、東京メトロや東急電鉄のモニター、東北地方の主要駅構内ビジョンで映し出すことになりました。微力ながらも、現地の現在を知ってもらい、いつまでも震災を忘れないでほしいとの願いをこめています。

【東日本大震災 復興の歩みフォト&スケッチコンテスト2019 大賞「応援旗にメッセージ」(岩手県釜石市)】

※UR都市機構 提供

【東日本大震災 復興の歩みフォト&スケッチコンテスト2019 優秀賞(UR理事長選) 「喜びの海水浴(越喜来浪板海水浴場)」(岩手県大船渡市)】

※UR都市機構 提供

読者へメッセージをお願いします。

 今年で復興10年の節目の年となりました。津波被災地のハード整備は完了しましたが、これからは賑わいや産業を創出する地域のまちづくりが真の復興につながると思います。URも未利用地の活用などのソフト支援のお手伝いができればと思います。また、原子力災害被災地における支援は、引き続きURの最優先業務として取り組んでまいります。読者のみなさまにおいては、被災地に関心を持っていただけることが最大の被災地支援となると思います。引き続きご支援とご協力をよろしくお願いします。(了)