トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.28

日本の自然再発見!アウトドアで暮らしを豊かに

近年キャンプブームが再熱している。キャンピングカーの市場は年々成長しており、昨年は一人でキャンプを行う「ソロキャンプ」も新しいアウトドアスタイルとして注目された。また国営ひたち海浜公園のネモフィラがつくる絶景がSNSで知れ渡り、茨城でも有数の観光スポットとなった。新型コロナウイルスの感染拡大にともなう外出自粛も経験したことで、より一層高まる自然に触れ合うことの価値。アウトドアに魅了される人々への取材を通じて、生活者の心境の変化や新たなライフスタイルの可能性を探る。

Angle B

前編

高機能作業着をアウトドアで着こなす

公開日:2021/4/20

株式会社ワークマン

広報部

伊藤 磨耶

過酷な現場で作業者たちが身を包むワークウェアを展開するワークマンが、アウトドア向けの商品を充実させている。機能性の高い服を手頃な値段で購入できるワークマンのウェアがSNSで評判を呼び、キャンプや釣り、ツーリングなどを楽しむ人たちの間に広まっている。ワークマン広報部の伊藤磨耶さんにそのねらいと展望を聞いた。

アウトドア向けの商品開発を強化している狙いは何ですか?

 アウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店「WORKMAN Plus(ワークマン・プラス)」という新業態の店舗の展開を加速しているのは、現場の職人やプロ向けの作業着として開発したワークマンのウェアを、趣味や普段着の時に使いたいお客様が増えていることに対応するためです。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、外出を自粛しなければならない期間が続いた影響で、「自粛太り」を解消するために運動を始める人たちや、3密回避のため、郊外に出かけて、アウトドアを楽しもうという人たちが増えていることも背景にあります。何かを始められる「入門編」として、高機能で低価格のワークマンのウェアを手に取ってもらえるような商品展開を進めています。もともと、作業着として開発したウェアを、キャンパーやバイクツーリングを楽しむ人たちにも使っていただいているという声もあり、さまざまな着こなしやファッションスタイルを積極的に発信しています。

ワークマンのアウトドア向けウェアの特徴は?

 そもそも、ワークマンのウェアは、アウトドア向けに開発したものではありません。過酷な環境働くプロ向けの「高機能」「低価格」の商品を、別の用途で使ったお客様たちが、YouTube(ユーチューブ)やインスタグラムなどのSNSで発信し、アウトドアのユーザーにも広まりました。例えば、「綿かぶりヤッケ」は、本来は溶接工向けに開発された頭からかぶるヤッケです。綿100%なので、溶接の火花が飛んでも燃え広がりにくい機能が特徴ですが、キャンプで焚火をする人たちが使った感想を発信したのをきっかけに情報が拡散され、アウトドア商品としても使われるようになりました。このほかにも、「イージス透湿防水防寒スーツ」は、今ではワークマンの代表的な商品ですが、もともとは、東北地方など寒冷地での外作業に対応し、防水・防寒機能を高めた上下組のスーツです。プロ向け用途以外のお客様に売れているとの情報が店舗から寄せられたので、調べてみると、バイクのツーリングを楽しむライダーや、ウィンタースポーツ、釣りなどを楽しむアウトドア派が多く、自転車の街乗りや子供の送り迎えのときにも愛用していただいているようです。

【人気のイージスシリーズはライダーだけでなくアウトドアシーンでも愛用されている】

※ワークマン提供

ウェアだけでなく、キャンプギアも拡充しています。

 2021年2月から、キャンプなどで利用できるローチェアやアルミ製のミニテーブル、保冷容器など8種類の製品をプライベートブランド(PB)商品として発売しました。「エントリーモデル」といった位置付けで、これからアウトドアを始める人に向けて訴求していきます。このほかに、ナショナルブランドのアウトドアギアの取り扱いも始めました。アウトドアのPB商品については「ついに、ワークマンからアウトドアギアが出たぞ」と反響が大きく、公式アンバサダーがブログやユーチューブなどで商品レビューを公開しています。アンバサダーは、ワークマンを応援してくれるアドバイザー的な存在で、ママさんキャンパーやバイカーなど30人程度にお願いしています。インフルエンサーと違い、無償でやっていただいているので忌憚ない意見をいただくことができ、ユーザーへの影響も大きいです。

「#ワークマン女子」の新店舗を相次いでオープンしています。

「#ワークマン女子」の初出店は、2020年10月16日で、横浜の桜木町駅前の「コレットマーレ」にオープンしました。続いて、東京ソラマチ店を2021年3月19日、関西初出店のなんばCITYを4月2日にオープンしています。「ワークマン」の店舗は郊外に多く、車でないと訪れるのは難しいという側面があります。
女性やファミリー層もしくは、女性や若年層をターゲットにするのであれば、公共交通機関を使って、気軽に訪れやすい駅近の店舗が必要だと考えました。一方、プロの作業者の買い物スタイルは、現場に向かうついでに車で立ち寄り、必要なモノだけサッと購入する「目的買い」が多いので、アウトドアや普段着のために商品をじっくり選ぶショッピングスタイルとは全く違います。これからは、後者のお客様向けの店舗として、「#ワークマン女子」の出店を加速していく方針です。

「#ワークマン女子」の特徴を教えてください。

「高機能」と「低価格」を両立するワークマンのウェアは、今のところ競合相手が見当たらないブルーオーシャンです。「#ワークマン女子」は、こうした「高機能」「低価格」市場の中で、特に女性をメーンターゲットとしています。SNSとリアル店舗の一体化を図るコネクテッドストアを目指しており、フォトスポットを設けて店舗からSNS発信ができるなど、インスタ世代顧客の取り込みを考えています。また、買い物を楽しんでもらえるような店づくりを心がけています。例えば、コレットマーレ店の売場面積はこれまでのショッピングモール店の1.5~2倍の452平方メートルあり、路面店を含めて当社の最大級の売り場面積を持つ旗艦店になります。同店の売り場構成は女性専用売り場40%、男女兼用のユニセックス20%、男性専用40%で、これまでのモール店に比べて女性専用売り場を2.5倍に拡大しました。女性が購入できる60%の売り場を店舗の前面に出して、入り口からは女性マネキンとメルヘン調の動画スポットを目立つようにして、内装も女性受けするものにします。男性売場は奥の方にやや「控えめに」配置するため、店舗入り口から見ると完全に「女性専用店」に見えるのが特徴です。

【店内各所に設置されたインスタ映えスポットが特徴的】

※ワークマン提供

ガーデニングやDIY、釣り、キャンプなどアウトドアを楽しむ女性の特徴をどうとらえていますか?

 女性がアウトドアの趣味を持ち、日々のアクティブな活動をSNSなどで発信する傾向は今後も強まると考えています。ワークマンの商品は、「高機能」が特徴なので、日常の生活の中でも、少しハードでタフさが求められるような趣味を持っている女性をペルソナとして想定しています。さらに、休みの日に、普段使いの着こなしもできる商品でもあり、どちらのニーズでもマッチするような商品を提供していく方針です。これまでは、釣りをするとき、バイクに乗るとき、それぞれの趣味のシーンでは、特定のスタイルに着替える女性が多かったと思いますが、ワークマンの商品は、アウトドアのシーンでも、それ以外の日常でも、おしゃれに着こなせる商品です。
※後編は4月23日(金)公開予定です。

いとう・まや 1991年12月17日生まれ、福岡県出身。東京女子大学卒業後、2014年株式会社ワークマン入社。直営店店長に配属、新店の立ち上げを担当。九州エリアのスーパーバイザーを歴任、品質管理部を経て、2019年から本社広報を務める。社外向けに商品のPRなどを行っている。
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