トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.16-2

総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしを守る防災減災~

激甚災害が頻発している状況の中、災害から国民の命と暮らしを守るべく、今年1月に国土交通省はその総力を挙げて、抜本的かつ総合的な防災・減災対策を目指す「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災~」を立ち上げた。国土交通大臣を本部長とする「国土交通省防災・減災対策本部」を設置し、防災意識社会の実現に向けた検討を進めるなどプロジェクトを強力かつ総合的に推進していく考えだ。今回は特集として、基本テーマの取りまとめ役を担う4名の幹部に話を聞く。

Angle B

後編

国全体で「防災の主流化」を推進

公開日:2020/3/31

国土交通省

国土交通審議官

栗田 卓也

近年の気候変動、少子高齢化・人口減、地域による人口格差が、国土・地域づくりにおける長期的な防災・減災の課題ということが見えてきた。これらの課題を解決するためには、国として、企業とどのように連携していくのか。また、防災を主流化する考えのもと、その実現に向け、どのように取り組んでいくのだろうか。

防災・減災に関して企業との連携はどのようにお考えですか。

 2016年の段階で、資本金10億円以上の企業の59.3%が本社を東京圏に置いています。2018年には日本全体の約3割の人が東京圏に住んでおり、東京の一極集中化が進んでいます。一方で、首都直下地震が30年以内に起こる確率は70%、南海トラフ地震が起こる確率も70~80%あり、世界から見て東京は突出して災害の影響を強く受ける大都市になっています。災害危険度が高い地域に企業機能も人口も集中しているのです。
 そうした現状を何とか変えていこうと、「企業等の東京一極集中に関する懇談会」(座長・増田寛也元総務相)という場を設け、昨年12月から議論を開始しています。東京が被災すると、膨大な建物被害、人的被害が発生するリスクがあります。帰宅困難者による混乱や、避難所の不足なども予想されます。人口や企業が東京に集中しないようにすることも大切ですが、一方で、被災時に緊急の避難先となるなど、インフラ的な機能を持つ企業もあります。災害リスクのある地域から脆弱(ぜいじゃく)性を排除していくためには経済界との協力は欠かせません。

【国民の多くは災害リスクが高い地域に居住しており、危険と隣り合わせだ】

国土交通省4名の幹部へ、防災・減災プロジェクトへの思いを聞いた。山田邦博技監は、気候変動や切迫する地震災害等には、部局の垣根を越えた協力と住民一人ひとりの防災意識が大切と語った。由木文彦国土交通審議官は、治水対策とまちづくりを連携させるとともに住民へのきめ細やかなハザードマップ情報の提供が必要と語った。藤井直樹国土交通審議官は、国も事業者も災害時への備えを持ち、すべての交通利用者へ迅速・正確な交通情報を伝えることが大切と語った。栗田卓也国土交通審議官は、気候変動、少子高齢化・人口減、地域による人口格差といった課題がある中で、国全体で「防災の主流化」を推進し防災力を向上させる意義を語った。国土交通省では、「いのちとくらしをまもる防災減災」をスローガンに、国民の視点でわかりやすい抜本的な防災減災対策について、国土交通省の全局を挙げて取り組む方針だ。
次回のテーマは、「中古住宅の活性化が日本を救うか」です。人口減少社会の中で、新築住宅を購入するだけでなく、既存の中古住宅を利活用する必要性が高まっています。リフォームや空き家活用など中古住宅を巡る動き、今後の展望等について、詳しい専門家等から話を聞きます。(Grasp編集部)

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