トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.14

「道」が変わる!新たなチャレンジ

私たちが日常的に使用している「道路」。近年、AIやIoT等の技術革新が進み、道路の建設やその維持管理にもこうした技術が活かされている。近い将来、道路整備がこれまで以上に進み、また、自動運転車や空飛ぶクルマが現実のものとなれば、既存の道路の位置づけも大きく変わることになるだろう。その時、道路空間をどのように活用していくのか。単なる交通インフラにとどまらず、オープンカフェなどコミュニケーションの場所としても、道路は大きな可能性を秘めているのではないか。

Angle A

前編

高速道SA・PAはパビリオン!

公開日:2020/1/17

「日本サぱ協会」

会長

山形 みらい

私たちの生活に欠かせない「道路」は近い将来、どんな存在になっていくのだろう。高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)も当初は道路利用者の休憩施設としての意味合いが強かったが、近年は地域に根ざしたサービス提供を行ったり、地域ごとの特性を活かしたレストランが整備されたりする魅力的なスペースとなっている。こうしたSAやPAの魅力について発信している「日本サぱ協会」会長の山形みらいさんに話を聞いた。

道路に興味を持ったきっかけを教えてください。

 三重県南部の尾鷲市に故郷があり、幼少時から家族で国道42号をよく利用していました。子どもごころに、トンネルは形状や長さなどに違いがあり、個性があって面白いと思ったのがきっかけです。小学校2年生の自由研究では、国道42号のトンネルの数を調べました。
 その時に自動車専用道路、高速道路も利用していて、「通行料を払わないと利用できない」という特別感が好きでしたね。当時は、現在のような一般道から入ることができるゲートはありませんでしたから、SA、PAには特別感がありました。
 「日本サぱ協会」は2014年に発足したSA、PAが好きな人たちが集まるファン協会です。毎年3月8日を語呂合わせで、「サぱの日」として記念日登録しています。多くの人にSAやPAなどに立ち寄ってもらい、その土地の文化に触れてもらうとともに、休憩することで安全で快適に高速道路を利用してほしいと願っています。

「日本サぱ協会」会長として日本のSAとPAの魅力を発信されています。SA、PAの魅力を聞かせてください。

 SAとPAはその土地の文化を発信する高速道路のパビリオンのような存在です。そこに行けば、歴史や文化などその土地のことがとてもよくわかります。日本のことを知りたくなったら、各地のSA、PAに行くといいですよ。その地域のお土産も地域性がよく出ていています。秋田県内のSAやPAに置かれている地域の名産品「いぶりがっこ」には、 「け」と書かれていました。「け」には「お召し上がりください」という意味があるそうです。
 そういった意味で、SA、PAを利用すると、地理学、経済学はもちろん、歴史学、民俗学といった学問について自然に触れることができるところも魅力です。
 私自身、その地域でわからないことがあれば、SA、PAのスタッフさんにお聞きしています。各地のSA、PAのお土産のこだわりやエピソードなども教えていただく機会があります。歴史を感じる場所といえば、新東名高速の長篠設楽原PA(愛知県)です。戦国時代の鎧が置いてあり、歴史好きな方はぜひ立ち寄ってほしいですね。個人的にSA、PAのレストランで食事をするのが好きです。レストランのお気に入りは、地域の特産である飛騨牛を食べることができる、東海北陸自動車道の関SAや中央自動車道の恵那峡SA(いずれも岐阜県)です。

【山形みらいさんがおすすめする長篠設楽原PAでは歴史やグルメを楽しむことができる】

NEXCO中日本提供

現在、国では道路空間の利活用に関する新たなビジョンの策定に向けて動いていますが、道路が自由に使えるようになったら何をしたいですか?

 道路上で各都道府県を表現し、PRできたら面白いと思います。例えば、「今月は北海道、来月は青森県」といった具合に路上で47都道府県の文化を展示し、見どころや名勝を表現します。北海道の場合は、時計台の実物大のモニュメントを道路の敷地に建てるなど、北海道の景色をちりばめた道路ペイントを行ってみるのはどうでしょうか。秋田県では、ナマハゲの迫力を道路で体験してもらいます。見た人に「いつか秋田で体験したい」と思ってもらえるかもしれません。
 各地域のアンテナショップを道路上で展開するのも面白いと思います。ビルの一室ではなく、多くの人の目に触れやすい道路空間というオープンスペースで展開することで、発信力や宣伝力が高まると思います。日本にいても日本の全国各地の文化を知ることは意外と難しいと感じますが、道路空間を活用すると、歩いている時に自然と目に入りますから、興味がなかった人にも伝えることができるでしょう。海外から訪れている人に対しても、日本をPRする場にもなります。
 また、都市部は一定の広さを持った空き地を確保するのが難しいので、企業のお昼休みの時間などにスポーツ広場として提供してみるというのはどうでしょうか。バレーボールでラリーをつなぐなど、レクリエーションスポーツの範囲で競技を行います。実際、レクリエーションスポーツは、企業など組織の垣根を超えてできますし、組織間での対抗試合を行うことで参加者のモチベーションを上げることもできるでしょう。
 さらにその周辺に観戦用のベンチを置くことで、参加していない人も楽しむことができます。観戦者に飲食提供できるようにすると、飲食にかかわる雇用を含めて経済効果も期待できます。
 仕事帰りの時間帯には、道路空間をオープンスペース化して、ウォークラリーを開催しても面白いと思います。オープンスペースにチェックポイントを用意することで、参加者同士によるコミュニケーションツールにもなります。さまざまな出会いのきっかけにつながる場としても期待できます。
※取材当時は令和元年12月
※後編に続きます。

やまがた・みらい 都市間高速道路研究者として活動している。地理学を独学で勉強して大学へ。大学では道路好きが高じて土木への興味を持つ。SA・PAを全力で楽しむ「日本サぱ協会」会長。ハイウェイドライブが趣味。ルーティストとマルチタレントとしてテレビ・ラジオ・トークイベントで活躍中。著書に「東名・名神高速道路の不思議と謎」(実業之日本社)ほか。
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