トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.23

半島は日本の台所!

三方を海に囲まれた半島は、陸の孤島のイメージがあるが、かつて日本は海上交通網で繋がっており、半島はその玄関口として栄えた歴史がある。漁業や農業が盛んで、日本の食料供給拠点として、食卓に美味しい食材を届ける「半島は日本の台所」。国は23の半島地域を半島振興法の対象とし、産業振興の支援等に取り組んでいる。リモートで働く生活、食や自然の豊かさ、余暇時間、幸福度等の半島地域の暮らしが再評価されている今、半島の魅力に迫る。

Angle A

後編

魅力の発信法、さまざまな可能性

公開日:2020/11/20

アップアップガールズ(2)

鍛治島 彩

 海運の玄関口としての繁栄の歴史を持ち、豊かな自然にも恵まれるなど、観光客を惹きつけずにはおかない魅力を持つ日本の半島。だが、交通の不便さなどから人口減少などの問題を抱える。国は半島振興法に基づき、さまざまな施策で後押ししているが、魅力をさらに高めて人を呼び込むには何が必要だろうか。

房総半島のほかに行ってみたい半島はありますか?

 私は四国に足を踏み入れたことがないので、愛媛県の佐田岬半島にいつか行ってみたいと思っています。テレビの旅番組などで四国の風景を見ていると本当にきれいで…。房総半島もきれいでのどかですが、首都圏からの観光客向けの施設がいろいろ整備されているという感じです。それに対して佐田岬は、あるがままの本来の自然を満喫できるような魅力がありそうだな、というイメージがあります。
 房総半島は果物の栽培が盛んで、特産のナシに関しては、小学校でナシ狩りの行事があるほどですが、愛媛の半島といえばミカンですね。しかもミカン(柑橘類)だけで2桁の種類があるというじゃないですか。私の家にもミカンの木があって毎年、実がなるのですが、なぜかあまりおいしくないんです(笑)。だから、佐田岬半島でおいしいミカンを味わってみたい。海の幸もタイをはじめ、さまざまなおいしい魚が獲れると聞いています。 
また、愛媛は道後温泉や松山城にも寄ることができますし、楽しめる場所が多そうだと思います。
 千葉のナシについていえば、私の家ではナシを食べる習慣がなかったのですが、小学校で行ったナシ狩りをきっかけに母が毎年、季節になると買ってきてくれるようになりました。ナシ狩りの時、あまりにおいしくて、小さい体で参加者最多の3個も食べてしまい、まだ食べられたのですが、体によくないと思って持ち帰って「このナシがすごくおいしい」と母に言ったのです。地元の特産品を知ってもらうような学校行事ってとても大事だと思います。

【国府台駅 おもてなし看板完成披露セレモニーでの鍛治島さん(右から2人目)、隣は高木 紗友希さん】

※千葉県提供

かつて半島は食料供給の拠点として栄え、食を含めた独自の文化や歴史があります。この伝統をどう継承したらいいでしょうか?

 「オール千葉おもてなし隊」の一員として、房総半島を含めた千葉県内の各地を回っていると、皆さんが口をそろえて言われるのが「どうしたらもっと人が来てくれるようになるだろうか」ということ。私から見ると“こんなに魅力的なものがたくさんあるのにどうして…”という気持ちがあるので、微力ながら、SNSなどで千葉の魅力を発信するお手伝いができればと思っています。
 一枚の美しい風景写真のポスターがきっかけで「お客さんがものすごく増えたんです」なんていうのをテレビなどでよく目にしますが、やはりきっかけが大事なのかなと思います。市町村で行われる地域振興の会議などに参加させていただくこともあるのですが、「若い人の意見が聞きたい」と求められると、その場でお勧めしているのがインスタグラムです。例えば「#(ハッシュタグ)房総半島」と打ち込むと、一般の人たちが投稿した房総半島のいろいろな写真が出てくる。それってまるで一つひとつの要素で構成された公式サイトのような感じじゃないですか。それが大きくなってどんどん更新もされて、ネットでみられる房総半島のマップのようになれば若い人へアピールできると思います。そういうツールによって若い人にまず来てもらうこと、そして地域の歴史や文化の魅力に気づいてそれを発信して…とうまく回っていく形ができる可能性もあり、まだまだやりようはあると思います。

【オール千葉おもてなし隊で、幕張の浜の清掃活動をする鍛治島さん(右)。左は高萩千夏さん】

※千葉県提供

国は23の半島地域を半島振興法の対象とし、観光、産業、定住促進などの支援に取り組んでいます。

 私も最近知りましたが、そのような支援が行われていると聞いてうれしかったです。国も半島振興に取り組んでいることをもっと早く知っていればよかったし、多くの人に知ってもらいたいと思いました。そういった取り組みが行われているということは、房総を含めた半島を常に見てくださっている人がいるということ。振興の支援を行う側の中に、半島で魅力のあるものや場所に気づいている人がいるわけで、広めてもらう大きな力になると思います。小さなことでもいいので、“今、こんなことに力を入れていて、最近、こんなことをやりました”ってSNSなどで伝えてもらえれば、目に留めてくれる人も結構いるはずです。地元愛のある人たちともつながれれば、さらに大きな力になるかもしれません。

コロナ禍でリモートワークやマイクロツーリズムなどへの関心が高まるなか、半島の暮らしが再評価されています。

 ピンチはチャンスということで、こういうときだからこそ、半島の良さが広まっていけばと思っています。首都圏の人からみて房総半島をあまり遠く感じないように、特に近隣の人たちにとっては列車などでの長距離移動による密のリスクも少なく、美しい海をはじめとする豊かな自然に気軽に触れることができるのが半島の魅力です。最近、千葉・房総半島という言葉を聞く回数が増えてきていることを感じています。

最後に読者にメッセージをお願いします。

 皆さんと一緒に千葉・房総半島の魅力を伝えていきたいと思っています。大阪とか九州とか、首都圏以外の人は東京ディズニーランド(浦安市)より先にある房総半島を旅行で訪れる人はまだ少ないかもしれませんが、ぜひ遊びに来てください。すてきな魅力に満ちています。(了)

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