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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.1テクノロジーは過疎を救うのか?

公開日:2018/11/30

A

[ 前編 ]

2020年、離島に荷物を届ける カモメの旅

株式会社かもめや代表取締役社長小野 正人

日本は人口減少時代に入るともに、都市への人口集中の流れの中で、過疎化は全国各地へ広がっている。過疎による大きな問題はライフラインの断絶だ。香川県高松市のベンチャー企業かもめやは、瀬戸内海の離島で2020年に無人物流システムの一部実用化を目指す。このスピードは大手企業にひけを取らない。代表取締役社長の小野正人氏に、離島のリアルと未来を聞いた。

離島でも24時間・365日モノが届く無人物流の構想は、どうやって始まりましたか。

 「2014年に高松市の男木島(おぎじま、2017年の人口148人)に住んでいた時、米アマゾン・ドット・コムが行ったドローン飛行実験を知ったことが始まりです。それが窓の外を飛んでいるカモメの姿と重なりました。最初は、カモメが荷物を運ぶイラストを描き、想像することから始めました。今、スロベニアのエアナミクス社の製造するドローンを採用し、無人の物流システムを開発しています」

もともと物流やドローンに関連した仕事をしていたのですか。

 「ドローンの専門家ではありません。以前は通信系エンジニアとして働きながら、休みの度に離島に出かけていました。ずっと『島に関わる仕事がしたい』と思っていて、『瀬戸内国際芸術祭』へのボランティア参加をきっかけに、2011年に芸術祭のスタッフに転職しました。芸術祭では、男木島と小豆島の担当でした」

実際に島で暮らし、人口減少や過疎化に伴う課題をどう感じましたか。

 「現在、男木島と高松港の間は、7時台から夕方まで1日に往復6便が運航しています。それ以外の時間帯は自家用船か海上タクシー、漁船で出入りします。海上タクシーの料金は1万円台で、相乗りすると通常のタクシー程度の料金になります。男木島は交通の便が良い方ですが、島の外の病院に行って帰って半日かかります。1泊しなければ病院に通えない島もあり、高齢者には大変です」
 「居住者の少ない島の物流網はすでに限界にきています。ある島では、日本郵便に委託され、自治会のおばあちゃん2人が交代で毎日島の外の郵便局へ島の全員分の郵便物を取りに行っています。やらなければ不採算地域なので事業者が撤退して、手紙や荷物が届かなくなるからです。おばあちゃんたちは『いつまで自分に続けられるかわからない』と話しています」

過疎化の進む地域での生活は大変でも、やはり島には住み続けたい人が多いのでしょうか。

 「会って話した感覚では、9割くらいの人たちは『体が動く限りは島で暮らしたい』と思っていますね。先祖がみんな住んできたという思いが大きいです。無人物流で島に荷物を届けられれば、その逆もできます。島で採れた新鮮な魚介類を、その日のうちに都市部の料亭に届けられるかもしれません。今世界の富豪たちなど、島に魅力を感じる人が増えています。島からの輸出入が簡単にでき、便利になれば、離島の概念が変わると思います」

離島の人やモノの流れはどう変わりますか。

 「今の定期船などを無人物流で置き換えるつもりはありません。尊敬している福武總一郎さん(ベネッセホールディングス名誉顧問)の言葉に、『在るものを活かし、無いものを創る』があります。定期船も大事な役割があり、定期船のある時間帯には無人輸送機は必要なく、補完できればいいと考えています。私自身、会社が落ち着いたら島に住んで働きたいです。自分が使いたいものを作るというのが、モチベーションになっています」

【陸、海、空すべてを使う】

かもめやが採用するスロベニア製のドローン(写真:かもめや提供)

米アマゾンなどの大手企業が取り組む無人物流とはどう違うのでしょうか。

 「アマゾンやドイツ物流大手DHLグループは、配達先の近くに広いドローン離着陸スペースを確保できる大陸向けの無人物流システムに取り組んでいます。これに対し、かもめやは住宅が密集した地域向けの『島国モデル』を目指します。ドローンだけでは実現できないため、陸・海・空の全部を使います。2020年には、数軒に1カ所の間隔にあるゴミ集積所のような距離に、集配所をつくり、そこまで無人で届けることを考えています」

陸・海・空で、どんなモビリティーを使えば実現できますか。

 「“陸”は男木島で昔から使われている手押し車『オンバ』の自動走行をイメージしています。今は手作りして実験していますが、すでに販売されているフィールドロボットを使うこともできます」
 「“海”は桃太郎の生まれた桃をイメージした無人輸送船『Donbura.co:ドンブラコ』を開発しています。船は多くの荷物を運べて、風に強いことが特徴です。船舶免許のいらない2人乗りボートでも、無人なら100キログラムの荷物を運べます」 
「“空”のドローンは、エアナミクス社のVTOL(垂直離着陸機)を採用しています。VTOLは世界的に産業用で主流となっており、垂直離着陸ができ、バッテリー交換なしで往復50キロメートルを飛行できます」

どのくらいの料金なら、島の人たちは使ってくれるのでしょうか。

 「個人で協力してくれる『かもめーず』のメンバーの調査によると、島の人からは船の往復と同じか安ければ使いたいという声が多いです。また、今は定期運航のなくなった船の航路を、無人物流で再現したら便利だという声もあります。これをしっかり考えます。システムの裏側は米アマゾンのクラウドサービスなどを使い、コストを安く抑えています。運航管理向けに収集する気象データは漁師の人から『欲しい』と引き合いがあります」

社員3人ということに驚きました。どうやって多くのことを進めているのですか。

 「社員だけではなく、島々を回ってくれる『かもめーず』のメンバーや、いろいろな会社と一緒にやっています。この進め方だからこそ、早く立ち上げられているのだと思います。私が普段会う人は協力先1社あたり約2人で、合計すると20人ほどですが、その先に各社のチームのメンバーがいます。みんな『島が好き』という共通の思いがあり、同じ方向でやれるのだと思います。」

プロフィール

おの・まさと 1977年香川県生まれ。国内インターネット黎明期よりインフラエンジニアとして日本の情報通信網の普及に貢献。ライフワークである離島・僻地めぐりを続けるうち、交通・物流事情の悪さを目の当たりにし、ドローンによる物資輸送を着想する。 香川県の高松に設立されたベンチャー企業のかもめやは、無人物流プラットフォームの開発を目的に法人化した。