トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.30

チャンス到来!?EVビジネス最前線

世界中で脱炭素に向けた取り組みが加速するなか、いよいよEVが拡大期を迎えそうだ。IT大手アップルなど異業種からの参入も相次いでいるが、日本経済の象徴ともいえる自動車産業は、100年に一度と言われるゲームチェンジに勝ち残ることができるのか。またEVの普及とともに自動化、コネクテッド、シャアリングといった分野の技術革新が進むことで、私たちの暮らしや都市の在り方はどう変容するのかを探る。

Angle B

後編

モビリティの進化を加速

公開日:2021/6/18

ソニーグループ株式会社

執行役員

川西 泉

EV化による温室効果ガス削減や、自動運転による事故防止など自動車の進化は社会に大きな恩恵をもたらす可能性がある。革新的な製品で人々の暮らしを変革してきたソニーグループはコンセプトEV「VISION━S」開発の先にどんな成果を期待するのだろうか。

ITや電機など異業種が参入することで、自動車産業はどう変わりますか。

 進化が加速すると思います。ITの世界と自動車産業は開発のスピードが明らかに違います。モビリティの未来を考えると、両者を融合することでより大きな成果を生むと思います。ソニーはハードとソフトのいずれも手掛けているので、両方の考え方を大切にしています。モノづくりは身体に染みついてますし、ソフトの重要性も理解しています。従って、新しい発想で車というモビリティを再設計することができ、そこに参入の意義があると考えています。

VISION━Sの開発で、「モバイルからモビリティへ」というテーマを掲げました。携帯電話がスマートフォンに代わったように飛躍的な進化が期待できるのでしょうか?

 モバイルに比べると構成する部品や要素も多いため時間はかかりますが、社会に与える影響はより大きなものになると思います。例えば、脱炭素社会を目指すうえで、エネルギーの問題は避けて通れません。モビリティは社会全体のエネルギーに占める影響が大きいので、進化がもたらす効果も大きいと思います。
 また、EV化など車自体の進化に加え、自動運転や効率的な交通システムの実現は街づくりにまで発展する課題です。自動運転は車載センサーのみならず、車両間や交通インフラの情報のやり取りが必要になるからです。

VISION━Sは昨年12月にオーストリアの公道で、実証試験をスタートしました。今後の開発の課題を教えてください。

 新型コロナウイルスの影響もあり、試験は想定通りに進んでいるわけではありませんが、実証の段階に入ったため個々の技術をより研ぎ澄まし、完成度を上げていくことに取り組んでいます。走る・曲がる・止まるという基本性能も含めて改善点はまだまだあります。また、現在も新たな車両を製造中のため、実証できる台数を増やしてあらゆる用途や環境に応じた走行データを収集し、検証したいと思います。

【VISION━Sはオーストリアやドイツで公道の走行試験を続けている】

※ソニーグループ提供

市販の可能性も含めて今後の展開を教えてください。

 市販についてコメントするのは時期尚早です。ただ、3月に国内で車両を初公開したところ、とても関心が高く、反響は大きかったです。クルマ離れが進んでいるといわれる若い世代にも「格好いい」と評価してもらい、購入や所有の対象となるオーナーカーとしての価値を認められたことは嬉しかったです。
 さまざまな企業から問い合わせや提案もいただき、ありがたいと思っています。VISION━SのEVプラットフォームを活用し、デザインの違う車種をつくることもできるので、あらゆる可能性があると思います。

最後に読者に対し、メッセージをお願いします。

 VSION━Sのプロジェクトは、30代を中心に比較的若いメンバーが活躍しています。みな過去にとらわれず、純粋に自分たちのつくりたい車を追求するなかで、いろいろなアイデアを生み、取り入れることで形になりました。自由な環境のなかで挑戦し続けることが、新たな価値や可能性につながるので、どんどんチャレンジしてください。(了)

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