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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.21宇宙ビジネス最前線!世界とどう戦う?

公開日:2020/9/18

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[ 後編 ]

日常を豊かにする宇宙ビジネスを

タレント黒田 有彩

動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で宇宙の魅力を発信する動画投稿を続ける、タレントの黒田有彩さん。宇宙開発ビジネスの民間委託が進むなか、日本が世界と渡り合うためには「多くの人を巻き込むストーリーが必要」と語る。宇宙開発にはどんな未来、可能性があるのか。

黒田有彩もウーチュー部」というユーチューブチャンネルを開設されていますね。

 2年くらい前から「宇宙の魅力を伝える動画を作りたい」と思っていました。でも誰に伝えたいのか定まらなくて、1人で続けていくのも不安で一度あきらめたのです。でも昨年、フィリピンに3カ月間、語学留学していろんな国の人々と触れ合うなかで、自分を紹介するツールとして動画チャンネルをやりたい気持ちが強まりました。帰国後、以前テレビ番組でお世話になったディレクターさんが手伝ってくれることになり、今年4月から始めることができました。
 今は、宇宙や私のことを知らなくても、「わかる! 面白い!」と思ってもらえるようなテンポや内容を意識して編集しています。

【YouTubeチャンネルで宇宙の説明をする黒田さん】

※公式YouTubeチャンネル「黒田有彩もウーチュー部」提供

大学で物理学を専攻されていたこともあって、学術的かつ分かりやすいですね。

 私と同じく動画チャンネルで宇宙やUFOの解説などもしている〝東大宇宙博士〟の井筒智彦さんに「黒田さんは本当にまじめに宇宙のことをやっているんですね」と言われて、はっとしました。宇宙に関する情報や興味を持つ人って、サイエンスとオカルトに分かれがちなのですけど、私はやっぱり科学が好きなんですね。実証されているものや日常、体験につながっていることを話したいのです。自分の中の”まじめさ”に気づきました。
 番組をやっていると、「面白いな」と思ってもらうには、きちんと理解していないとうまく説明できない、ということを感じますね。分かったふりをしないってことも大事です。

今年6月には米企業が有人宇宙船の打ち上げに成功し、今後も続々と宇宙へ飛び出す計画が進んでいますね。

 NASAが2024年の有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」では、50年前のアポロ計画と違い、月に人類が少しの間、住むことを想定しています。宇宙というものが、より瞬間的なイベントではなく、継続的なものになっていくなかで、地上の技術はもっと活用されていくのではないかと思っています。アイデアと好奇心があれば、いろいろな人が関わっていける時代になっていくのではないでしょうか。たとえば「食」というテーマで考えれば、主婦の経験を生かしたおふくろの味と呼ばれるようなものも生まれるかもしれません。

【2016年7月、NASAのジョンソン宇宙センターでアポロ11号クルーのパネルを背に】

※黒田有彩さん提供

宇宙空間を利用したビジネスも活発化しています。日本が世界と渡り合うためには何が必要だと思いますか?

 現状、日本のベンチャー企業はどこも資金力が足りず、資金調達を行うフェーズにあります。日本人が大切にしてきた創意工夫、アイデア力を生かすには、もっと多くの人を巻き込めるストーリーを作っていく必要があるのではないかと思います。
 アポロ計画が進められていた50年前は、東西冷戦下での競争という背景がありましたが、今はそうではありません。宇宙のための技術が「地上でも役立つ」「生活を豊かにする」ということがみんなの中で納得できないと、力を合わせられないのではないかと思います。
 その意味でも私のような存在が伝えていくことで、みんなで大きな未来予想図を描いていけたらと考えています。

宇宙ビジネスについてご自身のアイデアは何かお持ちですか?

 宇宙をエンタメ化していくことに興味がありますね。今、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟船内に機材を送り込み、地球と宇宙の双方向ライブ通信番組を作る取り組みが進んでいます。8月には、世界中から募集した動画を船内で表示してISSの固定カメラで撮影・放送するというライブ番組もありましたが、たくさんの方が宇宙に興味を持つきっかけになったと思いますので、私も宇宙と地球をつなぐような、ワクワクする企画ができたらと思います。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

 「ゆで卵を回転させると立つ」という誰でも知っている現象が、理論的に解明されたのは21世紀になってからでした。それを研究し続けて解明するには科学の才能が必要だけれど、物事を分かったふりをしない、当たり前と思わない、ということもとても大切だと思います。科学が好きになれば、宇宙にも自然と目が向くのかなと思います。
 宇宙に目を向けると、自分の価値観や世界というものがいかに小さくて断片的なものであるかということを、考えるきっかけになります。私は宇宙を学ぶことで、少しずつ謙虚に、優しくなれている気がしているのです。読者の皆さんにはぜひ、日常のなかで少し、宇宙を考える時間を取り入れてほしいなと思います。そうすることで、普段当たり前だと見過ごしていたことがキラキラと輝いて見えてくるかもしれません。(了)