トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.11

「空飛ぶクルマ」もう夢じゃない!

次世代モビリティの柱として注目を集めているのが「空飛ぶクルマ」だ。これまで、アニメや書籍等で未来の乗り物として語られてきたが、近年、国内外の企業が実用化に向けた開発を進めている。国内でも政府が2023年の事業開始を目標に掲げ、企業と自治体も連携して産業化に向けた取り組みを推進するなど、活発な動きを見せている。空飛ぶクルマ社会が実現すると、世の中にどのような変化がもたらされるのかを探る。

Angle A

後編

Made in Japanが真価を発揮する

公開日:2019/10/11

株式会社SkyDrive

代表取締役

福澤 知浩

空飛ぶクルマの実用化に向けて、民間企業とともに政府も力を入れている。国土交通省と経済産業省は2018年12月に、空飛ぶクルマの実現に向けたロードマップ(工程表)を策定した。日本のモノ作りは、この分野で力を発揮できるのだろうか。未来の交通手段の実用化に向けた世界的な競争の中で日本の強みなどを聞いた。

国内外で空飛ぶクルマを開発する新興企業の台頭が目立ちます。

 この事業分野では、新興のベンチャー企業の方が、大手企業と比べて意思決定プロセスが早いため、活躍の余地があるのだと思います。例えば、どんな国で、どんな法律に基づいて、どのように開発を進めるのか。こうした条件が、刻々と変化していく中で、臨機応変に対応できるのが新興企業の強みだと思っています。
 しかし、新興企業には研究機関や実験設備などが充実しているわけではありません。知的・人的資源は限られていますので、我々はトヨタ自動車やパナソニックなどの大手メーカーの協力を得ています。会社によって異なりますが、資金・技術・人材の面での支援を受けています。人材は、提携企業から出向という形で、優れた技術者が私たちの開発作業に一定期間加わっていただくなどのご助力もいただいています。フルタイムのメンバーは、現在およそ30人で、多くのボランティアにも支えられています。平均年齢は30歳代半ばぐらいで、エンジニアが中心です。

日本企業は海外企業との競争に対抗できますか。

 日本企業には強みがあると思っています。例えば、モノ作りの姿勢として日本企業は緻密(ちみつ)です。品質が高い。安全性が問われるこのような事業では、何より力を発揮できるのではないでしょうか。それに量産技術というのは日本の得意とする分野です。モノ作りの世界では、高品質のものを大量に、安定的に生産するということは難しいことです。例えば電気自動車(EV)で有名なテスラでさえ、量産には苦戦していますよね。私たちは、2023年の空飛ぶクルマ発売を経て、26年ごろには量産段階に入りたいと考えていますが、その時が来たら力を発揮できると思います。

今、空飛ぶクルマが盛り上がっている技術的な背景は何ですか。

 スマートフォンなどが多く作られている中で、高機能で小型の電機部品が安価に販売されるようになってきました。センサーやモーターの値段も下がってきています。昔だったら、車体制御装置だけでもスーパーコンピューター並みの重さの装置が必要だったでしょう。しかし今ではグラム単位で実現できるようになりました。だから空飛ぶクルマに搭載でき、比較的安価に実現できる可能性が高まっているわけです。
 バッテリーの持続時間は、年平均で5%程度ずつ性能が上がってきており、今後も性能は向上していくでしょう。販売初期での航続時間は20~30分を見込んでいますが、バッテリーの進化にともなって、更に長くなっていくだろうと考えています。もちろん、海外市場も狙っていきたいと思います。

【空飛ぶクルマの製作に打ち込むSkyDriveのスタッフたち】

*株式会社SkyDrive提供、2017年撮影

実現へのハードルはあるのでしょうか。

 今後は飛行を支援する環境整備がどのように進むかが、課題の一つとなってくると思います。例えば、「管制システム」です。A地点からB地点に向かうとした場合、他の機体とぶつかったり、近づいたりしないように、外部からコントロールするシステムです。提携先のNECが、日本では群を抜いてこの技術に優れていて、既にドローンで実験を進めています。将来的に、行き先だけ入力すれば、目的地まで機体を自動で誘導できるような仕組みになっていくでしょう。
 そして一般の方の理解、社会受容性も重要です。空飛ぶクルマは、現状のヘリコプターよりも騒音や風圧は抑えられますが、最終的には都会の街中での離着陸を目指しているので、特に離着陸地点の付近に住む人に、理解が得られるかはこれからの課題でしょう。住民の方に限らず、より多くの人たちの理解が得られるように情報を発信していきたいと思います。 
 今後の飛行試験においても、国の機関と情報交換をしながら、どのように安全性を担保していくかが大事ですね。新しい移動手段を、多くの方が歓迎してくれるような環境で、始められることが理想です。

将来の社会ではどのように活用されるのでしょうか。

 まずは、飛行実験を積み重ねて、2020年の有人飛行のデモフライトの成功を目指します。将来的に量産が実現すれば、200万~300万円程度で購入できるようになるでしょう。空飛ぶクルマの強みは、比較的安価で、簡単に操作できて、空港のような大きな離着陸施設が不要という点にあります。社会に受け入れてもらえるように、一歩一歩、進めていきたいと考えています。(了)

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