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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.31ビジネスマン必携!?進化する白書

公開日:2021/8/31

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[ 後編 ]

令和3年版の工夫と見どころ

国土交通省国土交通白書編集長(※取材当時)岡田 幸大

新型コロナウイルス感染症や、多発する災害にどう対応していくのか。『令和3年版国土交通白書』では山積する課題を整理し、目指すべき豊かな未来の姿を展望している。その注目ポイントと編集上の工夫を紹介しながら、白書の活用法や楽しみ方を提案する。

令和3年度版のテーマとして特に重視した点を教えてください。

 第1部のテーマは「危機を乗り越え豊かな未来へ」です。ここでは、新型コロナウイルス感染症と、災害の激甚化・頻発化を現在わが国が直面している危機ととらえています。
 東日本大震災をはじめ、わが国は大きな危機に何度も直面してきましたが、それらを乗り越えよりよい社会の形成につなげてきました。今回直面している危機についても、これをきっかけに様々な社会変革を成し遂げ、豊かな未来を実現すべきというのが今回の白書の考え方です。

【「豊かな未来」の姿をイラストで具体的に表現】

※令和3年度版国土交通白書より

新型コロナウイルス感染症の影響による社会の変化について、白書ではどんな取り上げ方をされましたか。

 新型コロナは、第1部で取り上げた2つの危機のうちの1つで、社会や暮らしへの影響が非常に大きく、重要なテーマとして位置づけています。第2章で、危機によって加速する社会の変化と顕在化した課題について5項目を挙げていますが、そのうち4項目がコロナに関係しています。
 1点目は「社会の存続基盤の維持困難化」です。なかでも地方の公共交通は、人口減少等によって維持が困難になっていたところ、コロナによって一層その深刻度合いが増しました。公共交通が維持できなくなれば、教育や医療をはじめとした他の生活サービスにもアクセスしづらくなり、結果的に地域の存続自体も困難になる恐れがあります。
 2点目は「多様化を支える社会への変革の遅れ」です。テレワークの普及など、コロナによって働き方が多様化し、それに伴って住まい方や生活様式も多様化が加速しています。例えば、ワーケーション(観光地やリゾート地でテレワークを活用し、働きながら休暇を取る過ごし方)や二地域居住(都市と地方など2つの拠点に住居を構えて生活すること)というスタイルも知られるようになりました。ただし、世界の中でのわが国の位置づけを分析すると、多様化を支える社会としてまだ十分とは言えません。特に、女性管理職の割合、転職者数、起業数など、働き方の面が遅れているという問題を提起しています。
 3点目は「デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れと成長の停滞」です。テレワークの普及をきっかけにDXの必要性が認識されましたが、同時に他の先進国と比較して、わが国のDXが遅れていることも明らかになりました。今後わが国が持続的な成長を遂げていくためには、DXの推進が不可欠です。
 4点目は「地球温暖化の進行」です。コロナによって、経済は大きな打撃を受けました。落ち込んだ経済をどう立て直してゆくのか。その方向性として「グリーン・リカバリー」が欧州を中心とする世界各国で唱えられています。これは、地球温暖化対策を経済成長の足かせではなく、成長の要素としてとらえようという考え方です。わが国も2050年カーボン・ニュートラルという目標を掲げており、温暖化対策を重点的に進めることが求められています。

今回の国土交通白書の改善点や新たに挑戦した点を教えてください。

 編集にあたってつねに意識したのは「読みやすさ」と「使いやすさ」です。
<前編>でも触れましたが、一般の読者にも興味を持っていただけるようなコラムやインタビューを増やしました。また、文章だけでは抽象的で伝わりにくい部分をイラスト化し、視覚的にイメージできるような工夫も施しています。
 さらに、デジタル化の拡張性を活かすべく、動画のQRコードリンク(43動画)、ウェブサイト(38サイト)を掲載しているのも今回の特徴です。国土交通省で作成した動画もありますが、関係団体や地方自治体がつくったものなど、バラエティに富んでいます。ぜひ関心のあるコンテンツにアクセスしていただければと思います。
「使いやすさ」という面では、「キーワード索引」や「関連情報へのリンク」を掲載したことが挙げられます。白書には膨大な情報がありますので、自分に必要な情報にスピーディにたどり着くための手段が必要だと考えたからです。
 ホームページについても、「はじめて読む方」向けのページを開設したほか、「コラム・インタビュー一覧」「動画一覧」も設けました。また他の白書へのリンクも掲載しました。

白書の編集を担当して、どんなところにやりがいを感じましたか。

 白書は、省の活動報告書として世の中に出て、多くの人に読まれるものです。このような書籍を作成することは、大きな責任と同時に非常にやりがいを感じる仕事でした。特に、第1部には自分たちが提起した課題やビジョンが反映されます。プレッシャーも感じますが、その分できあがったときの達成感は何物にも代えがたいものがありました。
 また、情報収集、執筆は、純粋に楽しい取り組みでした。私は、白書編集チームに来る前は広報的な仕事にも携わっていましたので、白書をもっと知ってもらい、使いやすくするためのアイデアはいくつか持っていました。それらを一つひとつカタチにしていく楽しさも感じました。

【Graspに登場する「寡黙なヒーロー」のモデルも取り上げました】

※令和3年度版国土交通白書より

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 ひと言で言うと、白書はとても便利なものであり、意外と面白いものです。
 国土交通行政はすそ野が広いので、一見白書の分量は膨大に見えますが、知りたい部分、必要な部分についてはコンパクトにわかりやすくまとめられ、かつ調べやすいようなつくりになっています。
 また、コラムについては、最新のもの、尖ったものやエッジの利いた取り組みを取り上げているので、ビジネスとしても参考になるし、知的欲求にも応えられるものではないかと思います。
 国土交通行政にそれほど詳しくない人でも楽しめるのが国土交通白書です。ぜひ興味のある分野から目を通してみてください。
国土交通白書ホームページ<https://www.mlit.go.jp/statistics/file000004.html>

編集後記

「女子鉄アナウンサー」として活躍し、国土交通省の「日本鉄道賞」表彰選考委員も務める久野知美さんは、『国土交通白書』を手に取り、インタビューやコラムから興味の幅を広げることができたとのこと。その『国土交通白書』を編纂した岡田幸大・国土交通白書編集長(※取材当時)は、インタビューやコラムを多くの人に親しんでもらう狙いで令和3年度版で大幅に増やし、動画のQRコードの掲載など色々な工夫をしたと振り返りました。広く一般の人に「読みやすい」白書をどうつくるかは各省庁が苦心するところです。白書の中でも販売部数がもっとも多い『防衛白書』を編纂した防衛省白書作成事務室のメンバーも、令和3年度では表紙や体裁などこれまでにない取り組みに挑戦しました。こうした工夫が凝らされた白書には、良質な情報と社会を読み解くヒントが詰まっています。
 次号のテーマは「可能性の宝庫!深海大国ニッポン」。海に囲まれている国・日本の、普段は目にすることのない世界、深海。この深海に魅せられ、その恵みを生かし、さらなる活路を探る3人に、深海のもつ可能性についてうかがいます。(Grasp編集部)