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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.22仮想空間に広がる新たな可能性!

公開日:2020/10/20

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[ 前編 ]

ゲームという仮想空間が集いの場に

IGN JAPAN編集長ダニエル・ロブソン

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、仮想空間を利用したビジネスチャンスが急拡大している。代表的な事例として、任天堂の人気ゲームシリーズ「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」は仮想空間上の無人島で動物たちと気ままに過ごす世界観やキャラクターのおしゃれ、インテリアを紹介できる機能が幅広い世代に支持され大ヒットした。そこで、ゲーム情報ウェブサイト「IGN JAPAN」のダニエル・ロブソン編集長に物理的な制約を超えて無限に広がる仮想空間ビジネスの可能性を聞いた。

日本でゲーム業界に携わるようになったきっかけを教えてください。

 私はイギリスで生まれ育ち、子供のころからビデオゲームが好きでした。任天堂やセガなど日本製のゲーム機がイギリスでも人気となり、日本のゲームに興味を持ち始めました。8ビットの家庭用ゲーム機「セガ・マスターシステム」を手に入れて遊んだことも覚えています。
 1999年からジャーナリストとしての活動を始めましたのですが、最初はゲームではなく、音楽の分野を取材し、音楽雑誌を中心に記事を書いていました。その過程で友人にもらった日本のガールズバンド、「少年ナイフ」のCDを聴き、日本の音楽に興味を持ち、日本人の友人が勧めてくれる日本の音楽を聴き、日本に行ってみたいと思うようになりました。当時はYoutubeもアイチューンもなく、日本の音楽を手に入れるのは相当難しかったので、思い切って2006年に来日しました。来日後は日本の音楽雑誌に記事を書いたり、海外の音楽雑誌に日本の音楽を紹介したり、英字新聞のジャパン・タイムズで編集の仕事をするなど経験を積みました。中でも海外でも注目度の高い日本のゲームについての記事を書いてほしいという依頼が多く、次第にゲームを取材対象にする機会が増えました。そこで、2014年末にジャーナリスト活動をいったん休止し、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)などでゲームの仕事をするようになり、ゲームの世界にどっぷりと浸かるようになりました。そして、現在は「IGN JAPAN」の編集長としてゲームメディアづくりに取り組んでいます。

「IGN JAPAN」の特徴や他のメディアとの違いについて教えてください。

 ゲーム情報のウェブサイトを運営する「IGN」(アメリカのIGNエンターテインメントの主要サイト)は世界28か国・25言語に対応する世界最大のゲーム情報サイトで、日本を拠点に運営しているサイトが「IGN JAPAN」です。英BBCなどのニュース・メディアを除き、ゲームを中心とするエンタメ系でグローバル展開する情報サイトはそう多くはありません。世界中に編集部があることによって、現場に近いホットな情報を届けることができるのが強みです。「IGN JAPAN」編集部は、世界的に注目度の高い日本発のゲームについて、開発者などのニュースソースに近いところにいるというメリットを活用し、読み応えのある新鮮な情報を記事化し、世界中に発信できます。また、読者にとっては、日本の情報だけでなく、日本で話題になる前の海外のゲームに関する情報もいち早く知ることができるのです。
 もうひとつ、他のゲームメディアとの大きな違いは、動画コンテンツの充実です。日本国内のゲームメディアは、生配信はやっているものの、しっかり編集された動画コンテンツは限られています。アメリカのIGNは動画編集力を駆使したコンテンツが多く、「IGN JAPAN」もレギュラートーク番組や開発者インタビュー、ゲームプレイ動画など、豊富な動画コンテンツを提供しています。

【IGN編集部のメンバーが新作ゲームや、業界のトピックスなどをしゃべりつくすYouTubeの人気番組「しゃべりすぎGAMER」】

※IGN JAPAN公式YouTubeチャンネルより

任天堂の「あつまれ どうぶつの森」が大ヒットしていますね。

 来年4月に20年目を迎える「どうぶつの森」シリーズはもともとファンの多いタイトルですが、今作は家庭用ゲーム機対応のソフトとしては久々で、ファンにとっては待ちに待った発売でした。「ニンテンドー スイッチ」は人気が高く、品切れになるほど売れています。スイッチ用のソフトは非常に人気があり、「マリオカート」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」など、任天堂のファーストパーティタイトルの販売本数はどれも高い数字を記録していますが、累計2200万本超という売上本数は、スイッチを持っている人の3分の1以上が遊んでいる計算です。これほどの大ヒットになるとは誰も予想できませんでした。やはり、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛要請が大きく影響したことは否定できないでしょう。コロナ禍の影響下でオンラインゲームソフトはどれも売れていますが、「あつ森」は連日、暗いニュースがあふれる中で、ほのぼのとした明るい雰囲気を共有できたことがヒットの背景にあると思います。大人から子供まで気軽にプレーできるし、ツイッターなどのSNSでシェアしやすいネタがたくさんあります。辛い自粛生活の中で、「あつ森」の仮想空間では友達と楽しい時間を共有できます。リアルの花火大会が中止されている中で、8月は毎週末の夕方から、ゲームの中で花火大会を開き、同じ時間に同じ仮想空間の中で、同じ花火を楽しめるという体験の共有も可能にしました。こうしたゲーム内の仕掛けが数多くあることも、人気に拍車をかけたと思います。

【花火大会では自作デザインの花火を打ち上げる仕掛けがプレーヤーを盛り上げた】

※任天堂公式YouTubeチャンネルより

「マインクラフト(マイクラ)」は、教育的な効果も注目されていますね。

 「マイクラ」は、3Dブロックで構成された仮想空間の中で、ものづくりや冒険が楽しめるゲームです。累計販売数が2億本を超え、月間プレイヤー数は1億2600万人以上と世界中の子どもたちに人気です。他の人が作った空間で遊ぶこともできるし、自分で、または友達と、自分たちの空間をつくり、その中で遊ぶこともできます。子供たちが自分で作った「世界」を親や学校に見せて認めてもらうという、まさに、「LEGO(レゴ)」のような感覚で遊べるゲームです。創造力や表現力を育てることができるという意味では、親や学校でさえ、「マイクラならもう少し遊んでもいいよ」と言いたくなるほどだとも聞きます。

ゲームと仮想空間の魅力はどこにあると思いますか。

 大人気ソフトの「フォートナイト」は、集めた素材で壁や階段などを作るクラフト要素のあるシューティングゲームです。ただ、シューティングゲームをプレーしなくても、友達たちと一緒にチャットルームで遊ぶこともできます。オンラインで友達とつながるという遊び方はコロナ前からあって、若者たちにとっては、仮想空間で遊ぶという行為は何の違和感もなかったと思います。仲の良い友達が仮想空間に集まり、「どのゲームで遊ぼうか」とグループに分かれ、好きなゲームと会話をオンラインで楽しみます。友達を誘いあって、公園や広場で遊ぶように、ゲームと言う仮想空間が子供たちの集いの場となっているのです。
※後編は10月23日(金)公開予定です。

プロフィール

ダニエル・ロブソン イギリス出身。大学卒業後に来日し、「ジャパン・タイムズ」や「MTV」、「NME」、「CNN」などのグローバルメディアでゲームや音楽、ポップカルチャー分野のジャーナリストとして活躍した。2015年に旧ソニー・コンピュータエンタテインメントの「ジャパンスタジオコミュニティーマネジャー」を務めた。2016年に産経新聞社の子会社、産経デジタルに入り、ゲーム情報サイト「IGN JAPAN」のローンチ(新サービス開始)と同時に編集長に就任。