トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.32

可能性の宝庫!深海大国ニッポン

四方を海に囲まれた日本。日本の海(領海と排他的経済水域)の広さは世界で6番目で、そのほとんどが深海です。食卓を彩る海産物を生み出す生態系、産業の発展を支える原油などの資源にも深海が関わっています。普段私たちが見ることのない世界に何があるのか、その可能性を探ってみます。

Angle A

後編

リアル世界にある不思議を見つけに

公開日:2021/12/21

声優

井澤 詩織

リアルな現実世界にある不思議を見つけることを大切にする声優の井澤詩織さん。深海生物に関する不思議が井澤さんの好奇心を刺激してきました。深海生物を通じて広がった仕事や活動の幅、これから挑戦したいこと、そして深海の世界が持つ可能性についてお伺いしました。

深海生物を好きになって、学びやお仕事にも変化はありましたか?

 深海生物にはまり出してから7、8年過ぎた頃に、「深海生物検定」が実施されることを知りました。2019年1月に初めての試験があるというので、私は初級を受験することに。公式ガイドブックを買って、大切なポイントはノートに写してひたすら暗記です。
ただ、ひとつ落とし穴だったのは、深海生物は深海魚だけなく、カニやエビなどの甲殻類、さらにはプランクトンや細菌などの微生物まで含みます。私の関心は深海魚が中心だったので、覚えるのを飛ばしていたら、試験では結構出題されていて焦りました。
 それと検定では、深海生物にまつわる数字も出題されるのですが、数字を覚えるのが苦手なので大変でした。身近な人に話をしながら、知識を定着させていきましたね。直前の1カ月前ぐらいかなり集中して勉強をして、なんとか合格できました。
 深海魚をモチーフとしたアクセサリーもコラボレーションで作りました。リュウグウノツカイのリングと深海ザメの「ラブカ」のネックレスです。あるアクセサリーメーカーが動物保護をテーマに商品開発をしていて、動物が好きな人、ということで声をかけていただきました。最初に何の動物をモチーフにするかを打ち合わせたときに、そういえば深海魚のアクセサリーは市販品であまり見かけないし、どうかな?と思いご提案をさせていただいて実現となりました。でも、可愛らしいデザインを表現するのは難しかったですね。私のファンの方は男性が中心なので、ワイルドなデザインでも良いのですが、私自身も身につけたかったので、可愛らしさにもこだわりました。
 深海魚の擬人化という企画に参加したこともあります。ある企業がウェブコミュニティを開いて、そのひとつが「深海コミュニティ」でした。管理人の役職をいただき、深海生物を擬人化して、キャラクターの設定とイラストを描いてアップしたり、コミュニティに集まる深海魚好きな方と交流したり。吸収した知識をアウトプットするのは楽しいことでしたが、オリジナリティを入れて表現するのは難しかったです。
 釣り番組へ出演したこともあります。その番組は、釣りをしたことのない女性が初挑戦する内容なのですが、ほとんどの場合は食べられる魚を釣りたいと答えるそうです。私の場合は、スタッフの方から「何を釣りたい?」と聞かれて、「深海魚釣りたいです!」と即答。でもどうやら深海魚フィッシングは費用がとても高いようで残念ながら実現には至りませんでした。でも、いつか深海魚、釣りたいですね!水深200mぐらいから深海の領域に入るので、その水深にいる深海魚でもいいので釣ってみたいです。

これから挑戦したいことがあれば教えてださい。

 ファンの人たちと一緒に沼津港深海水族館に行きたいです。私をきっかけに興味を持ってもらえることがあるなら、是非伝えていきたい。私の両親は漫画やゲーム、アニメにはあまり関心がなく、いわゆるオタク気質がないので、私がいくら「この深海魚はすごい!」って力説しても反応が薄いんですね。でも、仕事を通じて私のファンになってくれた方々はオタク気質を持っているので、興味の方向性が似ていて、深海魚のことについても伝えやすいと思います。
 声優としても深海魚の声を担当してみたいです。アニメーションのキャラクターではいろんな生物を擬人化する場合がありますが、妖怪はよくキャラクターになるんですけど、深海魚はなかなかないんですよね。世界的な玩具メーカーが、深海生物をモチーフにしたキャラクターを展開しているので、いつかボイスがつくことがあったら是非担当させていただきたいです。
 それと、仕事や活動とは関係ありませんが、食べてみたい深海魚がいます。深海魚は練り物の材料になることはあっても、普通はそのまま食べる機会がない食材。鮮度が大切で、水揚げされる港の付近でしか食べられないレアなものもあります。すごく美味しくて有名な深海魚がいるのですが、でも、困ったことにその魚を食べると必ずお腹を壊すのだとか。身に油がのっていて、味は抜群だけど、油が多すぎるからなんですって。でもいつか、挑戦してみたいです。

深海やそこに棲む生物についてどんな可能性を感じますか?

 疑問に思うのは、深海の生物はなぜ、あんなに大きく育つのかということです。だって、深海では肉食の魚もいますが、プランクトンなどの微生物が主食だという種類もたくさんいます。人間の方がはるかに栄養価の高いものを食べているのに、人間よりも大きく育つ生物たち。プランクトンってそんなに栄養価が高いのか?とか色々不思議です。5mのニシオンデンザメが発見されたことはお話しましたが、500年間ずっと成長し続けているというのもすごいと思います。深海という環境には生物が成長する可能性があるのでしょうか。
 それと水圧。深海はものすごい水圧がかかる場所で、カップ麺を使った実験が有名ですが、深海と同じ圧力をかけるととても小さく縮んでしまいます。深海魚はなぜあれほどの水圧に耐えられるのか? そしてなぜ、そういった環境に生息しているのか? 敵が少ない場所に行きながら環境に順応していった気もします。でも、サメはあれほど強いのになぜ深海に多いのだろう? 知りたいことはいっぱいありますね。
 日本の海域でレアメタルなどの資源が発見されたニュースなども見るとうれしくなります。宝探しのような感覚で、貴重なものが発見されるとワクワクしちゃう。私は日本が大好きです。世界に数多くある言語のなかでも日本語で良かったと思うし、四季のある気候も素晴らしいと思います。だから、世界でも貴重な資源が日本の海域で見つかって、日本に箔が付く出来事があるとテンションが上がります。「日本、最高!」って思っているので。
 でも最近は地球温暖化が進んでいて、そこは気になるところです。深海生物は冷たい水の中で生息しているので、水温が上がってしまうとやはり個体数が減ってしまうのではないかと心配しています。

【深海生物の生態や棲む世界…不思議だからこそ想像が広がります】

最後に読者へのメッセージをお願いします。

 私たち声優が普段、主戦場としているのはアニメなど創作された2次元のファンタジー世界です。でも、現実のリアル世界にも不思議なことはいっぱいあります。そのひとつが深海であり、深海生物です。リアル世界に楽しみを見つければ、地球や日本がきっと愛おしくなるはず。ファンタジーもリアルも両方素晴らしい!現実世界にあふれる不思議を一緒に覗きに行きましょう!

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