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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.9天気予報は「ニッポンの未来予報」!

公開日:2019/8/15

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[ 後編 ]

「ウェザー・ドリブン」が世界を変える

株式会社ルグラン代表取締役共同CEO泉 浩人

ビジネスとマーケティングの分野で注目を集める 気象ビッグデータ。株式会社ルグラン代表取締役共同CEOの泉浩人氏は「AIやIoTを活用することで、新たなビジネスチャンスが広がる」と語る。

マーケティングの視点から気象データにどんな魅力を感じますか。

 天気は、人々の行動や気持ちに影響を与え、ビジネスに大きく関係します。近年、気象情報の精度が上がり、気象データはビジネスやマーケティングで、重要な位置を占めるようになってきました。マーケティングの面では、例えば、ある人が過去にどういう行動をとったかという行動履歴データと気温や 天気の予測データを組み合わせることで、その人が必要とする情報を必要なタイミングで届けるといったことを可能とし、ビジネスチャンスにつなげます。気象データを活用し、顧客の環境や好みに応じて最適にアプローチする新たなマーケティングの手法で、「ウェザー・ドリブン・マーケティング」と呼んでいます。

気象データを活用した消費者へのアプローチとは。

 航空会社のケースでみると、航空会社は搭乗者という膨大な顧客データを蓄積しています。このデータを分析する中で、例えば、「毎年8月のお盆の時期に香港に家族旅行をしている」という顧客がいたとします。お盆の時期であれば、混雑が予測されるためゴールデンウィーク時には航空券の予約をするといった行動パターンが見えてきます。そこで、ゴールデンウィーク時にその人に対して「航空券の予約ができていますか」とメッセージを送ります。ここぞというタイミングで顧客に必要な情報を送ることができるのです。
 さらに気象データを組み合わせることで、旅行の予定日の現地の天候も考慮した旅行プランを構築することが可能になります。晴れた日に訪れた方がいい場所など、旅行の予定期間中の天候に応じて訪問する場所や施設などの順序を組み立てることができます。気象データを旅行日や顧客データと掛け合わせることで、旅行の計画段階からアプローチできるという優位性も生まれてくるのです。

気象データとAIを活用したサービスとは。

 当社は気象データを活用し、その日の天気や気温の変化に合わせて服装のコーディネートをおすすめするサービス「TNQL(テンキュール)」を2017年5月から展開しています。天候の変化の影響を受けずにファッションを楽しみたいと考える女性に向けたもので、毎日、5パターンのコーディネートを提案します。コーディネートは、天気や気温、降水量、風速、湿度などの気象データをもとに決まり、AIがユーザーの選択を学習することで、よりユーザーの好みに合った提案を行うことができるようにしていきます。
 開発時には、スマートフォン上でのサービスの展開を想定していましたが、サービスを開始すると、幅広い業種の企業から「システム自体を使いたい」といった問い合わせをいただきました。
 このため、現在は天気による需要の変化や消費者の購入・行動履歴をAIが学習し、天気や消費者の属性に応じて商品や情報を抽出・選定するシステム「TNQL API」そのものに関する事業も展開しています。
 実際に、百貨店の男性向けのECサイトでもこのシステムが利用されています。フレグランスは、アルコールに対する香り成分の濃度に違いがあり、それぞれ湿度によってフレグランスの香り成分の蒸散の仕方が違ってきます。同じ商品でも湿度によって、香りに対する感じ方が変わってくるのです。このため、梅雨時のような湿度が高い時期と春や秋の湿度が低い時期では、おすすめするフレグランスが違ってくるといいます。湿度といった気象データをもとに、おすすめする商品を変えることができるようにしています。店頭で店員の方がお客様に直接、お話をされていたことをオンライン上でもできるようにしたのです。

【「TNQL API」を実装した春秋航空日本法人の予約サイト】

旅行者は旅先の天気を事前に正確に把握し、効率よく旅行プランを練ることができる。※株式会社ルグラン提供

IoTを活用した新たなサービスの可能性とは。

 電気機器の分野でも応用が見込まれています。例えば、現在のエアコンはIoT化によって、いろいろなデータを収集できるようになっています。例えば、屋外の気温、室内気温やタイマーのセットの仕方などから、エアコンの利用を通じて、利用者一人ひとりの生活パターンがわかります。
このため、エアコンから得たデータと、スマートフォンのアプリを組み合わせることで、利用者の行動パターンに合った情報を提供することができるようになります。エアコンそのものが媒体になると言えるのです。こうした考えに沿っていくと、気象データは、個人の生活レベルでも、さまざまな場面での応用の可能性を感じます。(了)