トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.28

日本の自然再発見!アウトドアで暮らしを豊かに

近年キャンプブームが再熱している。キャンピングカーの市場は年々成長しており、昨年は一人でキャンプを行う「ソロキャンプ」も新しいアウトドアスタイルとして注目された。また国営ひたち海浜公園のネモフィラがつくる絶景がSNSで知れ渡り、茨城でも有数の観光スポットとなった。新型コロナウイルスの感染拡大にともなう外出自粛も経験したことで、より一層高まる自然に触れ合うことの価値。アウトドアに魅了される人々への取材を通じて、生活者の心境の変化や新たなライフスタイルの可能性を探る。

Angle B

後編

コロナ禍もコロナ後も「ぶれない軸」

公開日:2021/4/23

株式会社ワークマン

広報部

伊藤 磨耶

新型コロナウイルスの感染拡大によって、消費者の価値観が大きく変わっている。一方で、ワークマンのユーザーである現場作業のプロたちは、コロナ禍でも社会のインフラをしっかりと支える役目を果たしている。広報部の伊藤磨耶さんは「ワークマンのウェアは『高機能ウェアを手頃な価格で提供する』という軸を決してぶらしません。作業のプロにも、アウトドア派にも求められる商品を提供したい」と話す。

コロナ禍を経て、ワークマンの消費者に変化はありますか?

 ワークマンは、道路や建物、電気、水道、運送といった社会に欠かせないインフラを支えるプロの職人の方たちから支援されている会社です。コロナ禍でも、プロの方たちは変わらず仕事をされていますし、そういう意味において客足があまり落ちることはありませんでした。また、散歩やジョギング、密を避けるためのアウトドアを好む方の購入が増えています。店舗のほとんどがロードサイドにある路面店であることもポイントです。路面店は休業や、時短営業を実施した店舗も一部あったが、極力通常営業を実施してきた。

コロナ禍でオンライン販売は増えていますか?

 ワークマンの店舗は、フランチャイズチェーン展開をしていますので、オーナーの店舗で買っていただきたいという思いが強いです。もちろん、宅配サービスも行っていますが、オンラインで注文し、店舗で受け取るサービスを推奨しています。ワークマンの強みは900店舗以上のネットワークを持っていることです。お客様に、より身近で、いつでも必要な時に商品が手に入るような利便性の提供を心がけています。

【コロナ禍でも既存店舗の売上は好調で、#ワークマン女子など出店数は増加している】

※ワークマンHPから引用

昨今、アパレル業界でスローファッションが注目されています。今後、消費者の嗜好の変化をどの考えますか?

 「とにかく安く、早く」といった使い捨てのファッションではなく、長く着られるものを選ぶ傾向が強まっていると感じます。プロの職人作業やアウトドアのようなシーンは、汚れや傷みを受けやすいですが、ワークマンの商品は過酷な環境のストレスに耐え、長く使えるのが特徴です。こうした新しい消費者志向にも対応する一つの選択肢として考えていただきたいです。また、消費者のSDGs(持続可能な開発目標)への関心も高まっています。SDGsを本業の中で持続可能な形で着実に実行していきます。作業服を含む機能性ウェアで「機能と価格に新基準」を作ることをミッションにしています。製品のSDGs対応を行っても、販売価格を据え置きます。安易な値上げでお客様に負担を転嫁したら、環境に良い製品でも必ず需要が減退します。結果として、環境に悪い製品の比重が高まっていきます。ワークマンは企業努力と技術革新により、SDGs対応後も値上げをしない方針を掲げています。

40年以上の歴史の中で、なぜ、今、ワークマンが消費者の心をとらえているのでしょうか?

 1980年に、いせやの一部門として群馬県伊勢崎市に「職人の店 ワークマン」1号店オープンして以来、プロに支持されてきた「高機能」で「低価格」という商品の価値は変わらず、ぶれない軸として、今も継続して販売しています。イージス透湿防水防寒スーツを作業着以外の用途で求める人がいると知ったことがきっかけで、一般向けに、2018年に新業態「WORKMAN Plus(ワークマン・プラス)」をスタートさせたことで、プロ向け以外の用途で楽しんでいただけるユーザーにも、私たちの「ぶれない軸」が支持されるようになりました。プロが認める高機能を手頃な価格で手に入れられることが、ワークマン商品が受け入れられている理由だと考えています。

【1980年に株式会社いせやの一部門として群馬県伊勢崎市で「職人の店 ワークマン」1号店がオープンした】

※ワークマン提供

今後の展開は?

 人口減少の影響もありますが、建設技能労働者が少なくなってきていることを懸念しています。市場が縮小するため、「ワークマンは1000店舗が限界」という声もありましたが、プロ以外の人たちの需要があるということが分かり、限界説を吹き飛ばすことができる可能性が出てきました。会社のスローガンとして「声のする方に進化する」と言う言葉があります。新しいお客様の声に耳を傾け、会社を変革していくという考え方です。今後は、「#ワークマン女子」に代表される新しいお客様に支持されるような商品を発信していきます。今回、ジュニア向け、アウトドア向けの商品の本格展開も始めました。新しい需要に対応するときも、過酷な環境でも着用できる高機能に特化した商品という軸は同じです。気候変動により、夏場の熱中症の懸念は深刻ですが、ワークマンは作業者向けに服にファンが付いていて、衣類の中に空気を通す「空調ウェア」を展開しています。こうした機能性ウェアを普段着として着られるように、デザイン性を高めるなど日々研究しています。

読者へのメッセージをお願いします。

 「声のする方に進化する」というスローガンに従って展開したアウトドアギアの反応は上々で、今後、商品点数を増やして、販売戦略を強化していきます。ウェアについても、デザイン性を重視して、おしゃれな商品を増やしていきます。コロナ禍で、アウトドアを始めようと思っても、「いきなり高いものを取りそろえるのはちょっと」「何を買えばいいのかわからない」と考えている人は多いはずです。高機能をお手頃価格で買えるワークマンの商品は、そうした「入門者」にとってはぴったりです。コロナ禍が去って、結局キャンプはしなかった場合でも、それ以外の用途で楽しめます。(了)

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