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トリ・アングルINTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.28日本の自然再発見!アウトドアで暮らしを豊かに

公開日:2021/4/30

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[ 後編 ]

目指すは“三方よし”の公園づくり

国土交通省都市局公園緑地・景観課国営公園整備係長田中 希依

誕生から50年が経つ国営公園は時代とともに変化していく。新型コロナウイルスの影響は公園のありかたが変化するきっかけの1つとなった。地域とともに進化していくためにどのような公園となっていくのが望ましいのだろうか。

国営公園の誕生から現在までの利用の変遷について教えてください。

 順調に整備されてきた公園もあり、供用面積が増えるにつれて、利用者も増え、近年は全国で年間約4000万人の方に利用していただいています。公園の第一期開園はレクリエーションができる広場の開放で、その後、公園の整備が進むにつれ、里山文化や環境学習を楽しめるエリアをオープンしていく流れが多くなっています。最初は遊具やお花見などのレクレーション目的から、次第に環境学習の場として利用していく傾向だと思います。
 国営公園を整備することによって生み出せる効果が4つあります。それは①自然環境の保全・育成②地域の観光拠点③防災機能④歴史文化の保全-です。遊ぶだけの公園ではなく、学びや災害時にも活用できる公園として整備を進めています。公園はできて終わりではなく、できて管理して活用していく事業です。時代に合わせて変えていかなければならないと思っています。
 昨年、コロナ禍で、最初はどうしたら安心安全が確保できるのか、どう活用すればいいいのかと戸惑いもありました。しかし、消毒をする、密にならないようにするなど徐々に安全に使っていけるようになってきました。例えば、「国営沖縄記念公園」の「美ら海水族館」では、屋内ならソーシャルディスタンスを守り、「国営讃岐まんのう公園」で実施した花火大会は有料チケット制にして人数を絞る、茨城県の「国営ひたち海浜公園」のコキアが満開の時期には、事前予約制で人数を制限するなどの対応しています。

国営公園が地域で果たす役割はどのようなものですか?

 地域や自治体と連携してイベントを実施しています。例えば、長野県の「国営アルプスあづみの公園」で自転車レースの大会を行っていますが、公園をスタート、終点として街中を回るコースになっています。また、公園で地元の企業や商店と協力してマルシェを開いたり、小さなイベントを開催したりします。公園は作って終わりではないため、いろいろなことを実施して地域振興に役立てていきたいところです。
 現在、国土交通省でガーデンツーリズムという取組みをしています。民間や自治体が運営している庭園をパッケージにして、観光振興の取組みに使ってもらう試みです。例えば、茨城県では花や果物を観るというコンセプトで、国営ひたち海浜公園や偕楽園、花で有名な庭園などを周遊してもらうパッケージを作り、地域の活性化に繋げる取組みを行っています。
 ほかに、国と神奈川県と同県大磯町が連携した取り組みで整備している「明治記念大磯邸園」も登録されています。大磯にある大隈重信や伊藤博文などの明治の偉人の別邸を保存・活用しているものですが、湘南には明治期から多くの文化人の別邸があり、それらの地域と一帯を周遊してもらおうというものです。

【明治記念大磯邸園の外観】

※明治記念大磯邸園提供

国営公園の事業展開や田中さんが取り組んでいることついて教えてください。

 国営公園もできてから50年近く経ち、老朽化や陳腐化が進んでいます。活用の仕方も変わってきていますので、これからどうリニューアルして、活用をしていくかが検討課題です。民間の力を使って、公園内にいろいろな施設を作ることができるPark-PFI制度が、2017年の法改正で都市公園法の中に盛り込まれたところなので、民間と連携して魅力ある公園を作っていけたらと思っています。
 制度を活用することで、従来の都市公園法では、飲食店などが公園内に店舗を設置できる期間は10年でしたが、20年になりました。また建ぺい率も上がり、民間業者が参入しやすくなりました。民間の活力を使うことで利用者に楽しんでもらえる、より魅力ある公園になっていくといいなと思います。民間企業は参入して得られた利益の一部を、例えば公園の芝生やベンチの整備などに充当するよう決められており、利用者、国、民間企業の三方よしとなっています。
 現在、私が携わる大きな仕事は、一昨年火災で焼失してしまった首里城の復元です。他の省庁と連携しながら取り組んでいます。首里城は、現在設計を進めているところで、2022年に、正殿の本体工事に着工し、2026年の再建を目指しています。防火防災設備も慎重に検討しながら進めています。
 また、国営公園ではありませんが、岩手県と宮城県、福島県に東日本大震災の津波被害の記憶を伝承する場として「国営追悼・祈念施設」の建設に携わっています。私は完成に向けて予算やスケジュールを管理しています。岩手県と宮城県の施設は完成し、全面的に利用できるようになりました。福島の完成は数年先になります。

【高田松原津波復興祈念公園の国営追悼祈念施設】

読者へのメッセージをお願いします

 休みの日に国営公園に行き、多くの人が楽しんでいる姿を見ると、仕事にやりがいを感じます。国営公園のように何もない広々とした場所は、アイデア次第でいろいろな遊びができて楽しいものです。コロナ禍では、中高生や大学生の若い世代の利用が増えていくのではと感じます。より良い施設にするために、もっと多くの人に国営公園を利用してほしいと思います。(了)

編集後記

女優の鉢嶺杏奈さんは、テレビのロケなどで訪れた世界各地で「自然からエネルギーをもらう」とアウトドアの素晴らしさを語ってくれました。また、自宅のドアを一歩出れば、そこが文字通り〝アウトドア〟だと強調、難しく考えず、楽しんでほしいとも。専門的なワークウエアのノウハウを武器に、アウトドア向け商品を充実させているワークマン。広報部の伊藤磨耶さんは、「女性がアウトドアの趣味を持ち、日々の活動をSNSなどで発信する傾向は今後も強まる」との見方を示しました。全国に17カ所ある国営公園の管理などを担当する国土交通省の田中希依・国営公営整備係長は「国営公園のような広々とした場所は、アイデア次第でいろいろな遊びができる」と説明。歴史や自然に触れつつ、アウトドアを気軽に楽しんでほしいと呼びかけました。
 次号のテーマはロボットの目に映る「物流の未来」。コロナ禍でネットショッピングなどが急拡大して、物流の需要過多や人手不足に拍車がかかっています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が急務となるなか、ドローン、ロボット配送など消費者にも身近な最新動向を中心に3人の識者にうかがいます。
(Grasp編集部)