トリ・アングル INTERVIEW
俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ
vol.16-1
総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしを守る防災減災~
激甚災害が頻発している状況の中、災害から国民の命と暮らしを守るべく、今年1月に国土交通省はその総力を挙げて、抜本的かつ総合的な防災・減災対策を目指す「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災~」を立ち上げた。国土交通大臣を本部長とする「国土交通省防災・減災対策本部」を設置し、防災意識社会の実現に向けた検討を進めるなどプロジェクトを強力かつ総合的に推進していく考えだ。今回は特集として、基本テーマの取りまとめ役を担う4名の幹部に話を聞く。
後編
住民一人ひとりの防災意識が大切
公開日:2020/3/24
国土交通省
技監
山田 邦博
後編
地球温暖化による激しい気候変動が引き起こす自然災害は、今後ますます激甚化することが見込まれることから、堤防などのハードの整備やハザードマップの確認などのソフト面での備えの点でも、過去に経験のない事象を想定する必要がある。「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」に求められる視点と、防災意識を高めてもらうために住民に訴えたいこととは何だろうか。
このプロジェクトをまとめるにあたっての重要な視点は何でしょうか。
激甚化する自然災害に対応するには、部局の垣根を越えて協力し合うことが重要になります。学校の塀を安全なものにするとか、建築物や施設の電源をどう維持するかなど、国交省だけの問題ではなく、さまざまな分野の関係者と幅広く連携しなくてはいけません。災害に備えたまちづくりも重要で、水害や土砂災害が起きそうな危険な地域に住まないようにするということも課題です。
また、災害時にも社会のレベルを落とさない防災、できるだけ社会の被害を小さくする減災だけでなく、災害からの復旧や復興を早くしていく国土強靱化が重要です。私は以前に内閣官房国土強靭化室で国土強靭化に取り組みましたが、国土強靱化の施策は国家百年の計と記されています。一朝一夕にできないことですので、粘り強く取り組んでいく必要があります。防災・減災に加え、東日本大震災で教訓となった、人命を守り、経済被害が致命的なものにならず迅速に回復するような視点が重要です。
【人命や経済を守るためには、気候変動に対応した事前の防災対策が必要だ】
まとめられた対策をどのように実施していくのでしょうか。
3か年緊急対策にすでに取り組んでいますが、防災・減災対策はこの先3年とか5年で終わる、という性質のものではありません。緊急性の観点から優先順位をつけて実行していきます。また、非常に大切なのは、住民の方々一人ひとりが危機感を持ち、防災意識を高めてもらうことです。大雨や地震があっても、被災地と離れた地域では、「テレビの中のことで自分とは関係ない」と思っている人もまだまだたくさんいるのではないでしょうか。そうではなく、これからはいつ、どこで、どんな災害があってもおかしくありません。対策を実効性あるものにしていくには、その対策の効果や必要性を住民に分かりやすくしていくとともに、一人ひとりが防災意識を高めるよう、住民の方々の理解や共感を得ていくことが不可欠です。そのためにも、「いのちとくらしをまもる防災減災」をキャッチフレーズとして、積極的に情報発信を行い、住民とコミュニケーションを図りながら進めていく必要があると思います。(了)
【国土交通省では「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災~」を立ち上げ、全部局が連携し、国民の視点に立った対策を夏ごろまでにまとめ、防災・減災が主流となる安全・安心な社会の実現に全力で取り組みます。】
後編