トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.14

「道」が変わる!新たなチャレンジ

私たちが日常的に使用している「道路」。近年、AIやIoT等の技術革新が進み、道路の建設やその維持管理にもこうした技術が活かされている。近い将来、道路整備がこれまで以上に進み、また、自動運転車や空飛ぶクルマが現実のものとなれば、既存の道路の位置づけも大きく変わることになるだろう。その時、道路空間をどのように活用していくのか。単なる交通インフラにとどまらず、オープンカフェなどコミュニケーションの場所としても、道路は大きな可能性を秘めているのではないか。

Angle A

後編

より一層「ヒトにやさしい道路」へ

公開日:2020/1/17

「日本サぱ協会」

会長

山形 みらい

日本の主な高速道路は、1963年に開通した名神高速をはじめ高度経済成長期に建設されたものが少なくない。また、一般道路についても供用開始から期間が経過している路線が多い。2020年代に入った今日、高速道路をはじめとする日本の道路の未来、理想の道路について、「日本サぱ協会」会長の山形みらいさんは「交通事故のない道路が理想」と語る。

日本の道路のこれからを考えるうえで、どんな視点が大切でしょうか?

 現在、道路があって当たり前の世界となっており、私たちは日々の生活で道路のありがたさを実感できる機会は多くはありません。しかし、実際に道路がないと日々、生活をはじめ、経済自体が立ち行かなくなります。子どもたちは学校の社会科見学などで道路について学ぶ機会がありますが、大人も学校の社会科見学のような形で、インフラについて学ぶ機会があると道路に対する見方が変わってくるでしょう。きっと「道路を大事にしよう」という気持ちが生まれてくると思います。
 私自身、名神・東名高速道路の建設に携わった方からお話を聞いたことがあり、以来、「道路を感謝して使いたい」と思うようになりました。道路を造る、完成させるまでには、土地の用地買収から工事を進めていく過程での技術的な課題などの様々なドラマがあります。どんな道路もスムーズに開通させることは難しいのです。こうした道路の歴史や社会的な背景を、多くの人に知ってもらうことが必要だと思います。すべての日本の高速道路は自然と調和させた芸術品だと思っています。特に名神高速道路は、海外からの技術を日本の風土に合わせて改変して造られ、当時建設に携わった方々の技術力の結晶です。
 ぜひ、こうした高速道路の完成度の高さにも注目してほしいです。

【名神高速道路は日本の技術力の粋を結集して建設された】

1965年当時の一宮インターチェンジ

海外にも高速道路やSA、PAについて情報発信されていますが、海外の方からの反響はいかがですか?

 海外の方からは、「日本の高速道路は安全だ」とよく言われます。実際、日本の高速道路の安全性は誇っていいと思います。以前、サービスエリア内の書店を見て驚かれたこともあります。サービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)は日本の文化そのものだと思っています。海外ではなかなか実現できないことだと思いますね。全国各地、どれも同じではなく、すべてに個性があり、メリハリがあります。
 これまで私自身、全国にある884のSA、PAを訪れました。本四高速エリアでは、ユーザーが「これ欲しいな」「あれ欲しいな」と思うものがすべて近くにあるなど、きめ細やかな工夫に驚きます。一方、東日本エリアでは、ゆったりとリラックスできるような照明の使い方がとても上手です。日中ももちろん楽しいですが、夜にぜひ立ち寄ってほしいですね。 
 私自身、「日本サぱ協会」会長として、高速道路やSA、PAのファンとして活動していますが、今後は、海外の方をお呼びして、日本のSAやPAの素晴らしさを紹介できたらと思っています。バスツアーを行って、各地のSAやPAの店長さんらに魅力を語っていただけたら面白いですね。また、全国6つの高速道路の運営会社と協力して、合同でイベントも開催したいです。

ご自身が考える理想の道路とは?

 交通事故のない世界です。事故はだれかの過失で発生します。全員が交通ルールを守れば事故は起きないはずです。ただ、車に関しては交通事故を全くなくすということは難しいと思いますが、自動運転が発達すると事故率を下げることができると思います。
 生活空間と移動空間が重なるところでは、対人事故が起きやすくなります。また、移動空間に特化している専用道路は自動車の走行速度が速いがゆえに、一歩間違えると重大な事故につながります。多くの主要道路が建設された高度経済成長期の時代背景もありますが、現在の道路は歩行者よりも車を優先している面もあるような気がします。
 横断歩道や歩道橋についてみると、歩行者にとっては、高低差、段差など困難な面があり、「ついショートカットをして道路を渡ってしまう」という気持ちはとてもよく分かります。
 歩道よりも車道側で高低差を付け、歩道はなるべくフラットにするといったように、歩行者の困難を引き受けた方が、歩行者にやさしい道路となるのではないでしょうか。また、車を運転していると、意外と自分が今、東西南北、どちらの方向に向かっているのか、ナビを確認していても認識していない方が多いと感じています。そこで標識に方位を入れることで車を運転している人が安全で快適に利用できると思います。実際に標識に方位を入れている道路もあります。こうしたユーザーフレンドリーの取り組みが増えてほしいですね。
 個人的には運転、ハンドル操作をするのが好きなので、将来的にすべての自動車が自動運転化されるという世界は想像できませんが、自動運転を可能にするAI(人工知能)やIT(情報技術)などの進化とともに交通の流れはスムーズになると思います。そして、自動運転がより広まってくると、道路はより歩行者の方にもやさしくなれるという気がします。今後、確実に道路のあり方が変わってくると思います。(了)

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