トリ・アングル INTERVIEW

俯瞰して、様々なアングルから社会テーマを考えるインタビューシリーズ

vol.37

航空機の道先案内人。空の安全を守る航空管制官

1日数千機の航空機が飛び交い、「過密」と言われて久しい日本の空。航空管制官は、地上からいわばその交通整理をし、パイロットと共に安全なフライトを実現する“空の番人”です。2022年7月放送開始のドラマ『NICE FLIGHT!』では、そんな航空管制官とパイロットの恋愛模様とともに、プロフェッショナリズムや仕事の醍醐味が描写されています。今回はドラマの視点を借りて航空管制官の仕事に迫るとともに、現職の方からよりリアルなお話についてうかがいます。

Angle B

前編

航空管制官は魅力ある職業

公開日:2022/9/2

監督

宝来 忠昭

空と空港を舞台に、パイロットや航空管制官というプロフェッショナルな職種の主人公たちの仕事と恋を描くオリジナルドラマ『NICE FLIGHT!』。ドラマの監督である宝来忠昭さんに、ヒロインとして活躍する航空管制官の仕事の魅力や、制作の裏話をうかがいました。

航空管制官という職業について、制作に入る前に勉強されたそうですね。

 中村アンさんも役作りで奮闘されていましたが、私も、こんなに勉強したのは大学受験以来じゃないかというほどいろいろ調べました。航空機が飛ぶためにはフライトプラン(飛行計画)を管制機関に提出しなければならないとか、空域、管制区、管制圏という区域の概念、日本の空港の種類といった基礎知識から、具体的な航空管制業務の様々な内容、取得すべき資格、彼らは何人くらいいるのか、男女比はどうか、などなど。単なる情報収集を超えて没頭して、ふと「俺、何やってるんだろう」と思うことがあるくらいでした。でも、それでも全然追いつかない、数カ月程度の勉強では付け焼き刃なんだろうなと実感しました。

撮影前に国土交通省航空局に取材されたそうですね。

 航空局さんに取材させてもらえるのは本当にありがたかったです。少しでもまともな話ができればと勉強したわけですが、正直なところ、当初は「さて、どこから聞けばいいのかな」という漠然とした感じでした。そこで、どういう仕事をされているのかという素人感覚な質問から、リモート含めて何回か取材させてもらいました。現役の管制官に接すると、専門職で大変な仕事だということがヒシヒシと伝わってきました。取材を重ねていくうちに、知りたいことが山ほどある中で一番知りたかったのは、どんな想いがあって管制官という仕事に就いたのか、今どんな想いでこの仕事をしているのか、ということだなとポイントが絞られてきましたね。

「航空管制官という仕事に対する情熱」がドラマでも重要だと感じられたのですね。

 そうです。取材した航空管制官の中には、実際に空港のロビーなどに足を運んでお客様を眺め、「この人たちを乗せるんだ」と気を引き締めるのだと話してくれた方もいました。私たちは、なまじ「航空管制官は声で航空機を誘導する人」程度に知っているのでその認識で止まってしまうけれど、管制官一人ひとりには人の命を預かる仕事への真摯な思いが宿っているのだということを感じました。ですからドラマでも、中村アンさん演じる渋谷真夢が、管制官として気づくこと、発見することを描きながら、人とどう触れ合い関わっていくかを大切に表現しようと思いました。

実際に管制塔にも上られたとか。

 いやぁ、もうすごかったです。管制シーンは想像で作るしかないと考えていたので、まず「上がらせてもらえるんですか?」ってうれしくて。実際に羽田空港の管制塔に上がって管制室に入った瞬間は、そこから見える空の景色と働く皆さんの姿が本当に神々しくて圧倒されました。事前の勉強で、どんなやりとりをしているかなど雰囲気はわかっているつもりだったのですが、高さ116mの本物の管制塔内に身を置いた時の感動は大きかったです。監督として、例えば機器の設置されている感じとかいろいろチェックしようと思っていたのですが、「おー、すげぇ」で大体終わってしまいました(笑)。それくらい素晴らしい仕事場で、ここは真剣に働く気持ちになれる場所だろうなと思いました。

航空管制官の仕事ぶりは抱いていたイメージと違いがありましたか。

 大きく違ったわけではなかったですが、やっぱりカッコいい! 1秒1秒、いろんなことを常に確認し、指示を出し、許可を出す、どこを見て、何を見て、というのが途切れない。「ここまでやらなきゃいけないのか」というくらい多くのするべきことを声でさばいていくカッコよさが魅力でした。
 私は、企画したプロデューサーの神田さんほどこの職業に興味を持っていたわけではありませんが、取材や制作の過程でどんどん興味が高まって、しまいには自分でも「これ、絶対ドラマに関係ないな」とわかっていることまで質問するようになりました。担当窓口になっていただいている航空管制調査官の方が、どんなことにも丁寧に答えてくださるので、つい。事前取材から制作期間を通して航空局さんには本当にお世話になっています。

航空管制官の仕事シーンで特にこだわった点はどこですか。

 実際に管制塔を見て感動しましたし、航空もののドラマとして、気持ちよさも含めて空を見せたいと強く思いました。羽田タワーらしい管制シーンにしたかった。しかし、実はこれが一番の難関でした。さすがに年中無休24時間体制の本物の管制塔を借りられるわけではないので、羽田タワーの360度に開かれた大きなガラス窓の部屋をどうやって再現しようか悩みました。ぐるりと空が見える高さのセットを設営するのは予算的に難しく、でも嘘っぽくはしたくない。あちこち探して、撮影スタートの直前に首都圏某所の施設を借りられることになりました。施設内に大きな窓が並んでいる場所があり、そこを背景にして手前にセットの機器などを設置して撮影しています。そこが見つかって協力してもらえて本当によかったです。

ほうらい・ただあき 1978年、福岡県飯塚市出身。映画監督。ドラマ監督。立命館大学在学中より自主映画を撮り始め、卒業後フリーの助監督を経て映画、テレビドラマ、MV、舞台の監督と活動の場を広げる。最近のTVドラマ監督作品は『家政夫のミタゾノ』『消えた初恋』など。
インタビュー一覧へ

このページの先頭へ