こんなところに国交省
知る人ぞ知る取組からちょっと意外なお仕事まで
公開日:2026/7/28
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海難審判所
調査と審判を通じ裁決によって海難の再発防止をめざす
海事の専門家集団「海難審判所」
四方を海に囲まれた海運国家・日本では、日々、多くの船が人や物資を運び、社会を支えています。「海難審判所」は、こうした船による衝突や乗揚などの事故“海難”が発生した際、理事官が行う調査と審判官が行う審判を通じて裁決によって海難の再発防止へとつなげる役割を担う機関です。「船舶事故の調査は運輸安全委員会が行うのでは?」と思った方もいるかもしれません。確かに両者は共に海難事故に関わる機関ですが、その役割は異なり、運輸安全委員会は「なぜ事故が起きたのか」を科学的かつ客観的に調査及び分析します。一方、海難審判所は「その事故において、海技免許など船舶の運航に関わる資格を持つ関係者に職務上の故意又は過失があったか」を審理し懲戒する機関です。今回は、この海難審判所の業務や仕組みについて紹介します。

「海難審判所」って?
海難審判所は、衝突や乗揚などの事故“海難”が発生した際、裁判に類似した「準司法手続」により、海技士、小型船舶操縦士、水先人といった船舶の運航に関わる資格を持つ関係者の故意又は過失を明らかにし、免許停止などの行政処分を行う国土交通省の特別の機関です。海難審判の目的は、公正かつ慎重な手続を通じて当事者の過失を的確に認定し、裁決によって行政処分を決定することで、同種海難の発生を防止し、ひいては人命と財産の安全確保や環境保全に寄与することです。
海難審判所の組織は、多数の死傷者が発生するなどした「重大な海難」を取り扱う中央の「海難審判所(東京)」と、それ以外の海難を取り扱う全国8か所(函館、仙台、横浜、神戸、広島、門司、長崎、那覇(門司の支所))の地方海難審判所から構成されています。
それぞれの海難審判所には、海難を調査し、審判の必要性を判断する「理事官」、審判を主宰して裁決を行う「審判官」が配置されています。裁判に例えると、検察官にあたるのが理事官、裁判官にあたるのが審判官です。
海難の調査や審判を行うには、海事分野の高度な知識と豊富な実務経験が不可欠なため、理事官や審判官は第一線でのキャリアを持つ大型船の船長や機関長などの専門家から登用されています。
海難審判所の具体的な業務は?
●海難審判の流れ
Step1 審判開始の申立て
理事官が関係行政機関からの通報や報道などにより海難を認知すると、速やかに調査を開始します。関係者への質問や船舶の検査などの結果、海難が海技士、小型船舶操縦士、水先人の職務上の故意又は過失によって発生したものと認めた場合、理事官は、これらの者を「受審人」(裁判に例えると被告人)に指定し、海難審判所又は地方海難審判所に審判を行うよう請求します。これを「審判開始の申立て」と言います。
また、理事官は、受審人に係る職務上の故意又は過失を判断するために必要があると認められる者を「指定海難関係人」として指定する場合があります。受審人と指定海難関係人は、海難審判において自身をサポートする「補佐人」(裁判に例えると弁護人)を選任することができます。

Step2 口頭弁論により審理
海難審判は、理事官、審判官、書記が列席し、受審人、指定海難関係人、補佐人が出廷して公開の審判廷で行われます。審理は提出された証拠に基づき口頭弁論によって進められ、当事者に対して十分な主張や立証の機会が確保されています。

Step3 審判官による裁決
審理が終了すると、審判官による裁決が行われます。重大な海難を扱う海難審判所は3名の審判官で構成される合議体、地方海難審判所は原則1名の審判官によって審判が行われ、受審人に職務上の故意又は過失が認められた場合には、業務停止や戒告などの懲戒処分が科されます。
公開の審判廷において、当事者に十分な主張・立証の機会を与え、高度な知識と豊富な実務経験を持つ審判官の公正な判断によって過失が認定される海難審判の裁決は、海事関係者にとっての教訓となり、同種海難の再発防止に寄与するものとなっています。

裁決の例。これらは海難審判所のホームページ等から閲覧できるため、海事関係者の間で広く共有することが可能。
Step4 裁決に対して不服がある場合
受審人は、裁決に対して不服がある場合、東京高等裁判所に裁決取消しの訴えを提起することができます。提訴がなく裁決が確定すると、理事官は裁決に基づく懲戒を執行します。

●歴史150年の積み重ね
海難審判制度の歴史は古く、日本では1876年(明治9年)に制定された「西洋形商船船長運転手及機関手試験免状規則」にその起源を見ることができます。この規則は、「西洋式の大型商船を運航する船長、航海士及び機関士となるためには、試験に合格して免許を取得しなければならない」ことを定めたものですが、同時に、海難を発生させた場合の免許の停止や取消しについても規定されていました。
その後、日本の海運業の発展に伴い、船員に対する懲戒制度をより明確に位置付けるため、1896年(明治29年)に「海員懲戒法」が制定され、海難審判が単独の法制度として確立されたのち、1947年(昭和22年)に制定された現在の「海難審判法」に受け継がれました。
このように長年にわたり行われてきた海難審判の裁決は、海上交通の基本ルールである「海上衝突予防法」などの関係法令における航法解釈にも影響を与え、日本の海上交通の安全確保と安全意識の向上に大きく寄与しています。
●安全意識を高める取組
船舶事故や海難審判について広く人々に知ってもらえるように、海難審判所では次のような取組を行っています。②及び③については、海難審判所のホームページやお電話でお気軽にお問い合わせください。
① 事例解説「JMATニュースレター」
海難事例を分かりやすく紹介するニュースレターを発行。「荒天時の海難」「遊覧中の海難」など、毎号同種海難の再発防止の教訓やデータなどを掲載しています。
② 教育機関・企業への出前講座
事例に基づいた再発防止策を紹介するために、教育機関や船会社に海難審判所の職員を講師として派遣する「出前講座」を行っています。リモートによる説明会も可能です。
③ 社会科見学の受け入れ
修学旅行や社会見学で訪れる児童や生徒に対して、海難審判所の業務説明や審判廷の開放を随時行っています。模擬審判のほか、海難審判の仕組み、日本における船舶の役割や交通ルールについて分かりやすく解説しています。
現役職員が教える! 海難審判所ってこんなところ
理事官・審判官・事務官それぞれに、志望動機や仕事のやりがいを聞きました。海難審判所の仕事に興味を持った方は、審判官・理事官の募集情報もぜひチェックを。




