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公開日:2026/4/16

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TSUNAG

緑の価値を「質」と「量」から見える化

民間事業者等とともに win-win の緑化を目指す

discovery TALK

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国土交通省都市局都市環境課
広域緑地調整係長
横山さん

 緑のための新制度「TSUNAGツナグ」について聞きました。

公園、屋上庭園、ビオトープなど、街中につくられた緑の空間に和み、癒されている人は少なくないと思います。こうした場所の整備・管理には地方公共団体だけでなく民間事業者の力が不可欠ですが、緑がもたらすベネフィットは、誰もが分かるように数値化して表すことが容易ではありません。「価値が分からないものにお金はかけられない」と、緑化への取組が進まないケースもしばしばです。そこで、国土交通省が2024年11月にスタートさせたのが、「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」です。緑の価値を誰にでも分かるように「見える化する」というこの制度について、都市環境課の横山係長に話を聞きました。

これからは、緑も質を求められる時代

編集部

「TSUNAG」は民間事業者等による緑化の取組を後押しする制度だと伺いました。具体的にどのようなことをするのでしょうか。

横山さん

都市緑地法に基づき、民間事業者等による良質な緑地確保の取組を、国土交通大臣が評価・認定する制度です。評価は「気候変動対策」「生物多様性の確保」「Well-beingの向上」などの「質」と、緑地の「量」(緑地面積、緑地割合等)の両面から行い、評価が高いものから順にトリプル・スター、ダブル・スター、シングル・スターとランク付けされます。質に関する評価項目は、「緑地確保指針」に基づき50項目を設定し、一定基準を満たす計画を認定します。また、量に関しては、敷地面積の10%以上、かつ1000㎡以上(2027年度より500㎡以上)が認定対象となっています。

編集部

都市の緑地の保全や緑化の推進のための法律「都市緑地法」に基づき、緑を守り、増やす制度が他にもありますが、なぜ新しくTSUNAGが創設されたのですか。

横山さん

近年、気候変動への対応や生物多様性の確保、Well-beingの向上など、都市を取り巻く課題への対応がより一層求められています。一方で、日本の都市は世界と比べて緑地の充実度が低く、多くの都市で緑地が減少しているのが現状です。そのため、都市の緑地を量・質の両面から確保し、良好な都市環境を形成していくことが重要です。
こうした取組を進めるには、公的施策に加え、民間事業者による緑地確保の取組を広げていくことが不可欠です。ただ、緑地整備は収益につながりにくいという認識もあり、取組が限定的という課題があり、そこで、緑地確保の価値を投資家や金融機関、市民などに分かりやすく「見える化」し、民間投資を後押しする仕組みとして、TSUNAGを創設しました。

編集部

私たち利用者にとっての「緑の価値」は、実際に憩いの場として使用したりしていますから、よく分かります。ただ、民間事業者は、緑地を整備・管理することで、どんなメリットがあるのでしょうか。

横山さん

はじめに、緑地によって従業員や地域住民が癒され、心身の健康や幸福感が高まる、いわゆるWell-beingの向上は、利用者だけでなく民間事業者にとっても大きなメリットになります。施設利用者だけでなく、そこで働く従業員の気持ちも穏やかにし、職場環境の満足度向上にもつながっている事例や、屋内では集中し、屋外ではリラックスしてアイディア出しを行うなど、緑を活用した働き方を通じて従業員の生産性向上を期待している事例などがあります。
また、緑地は地域コミュニティとの関係づくりにも役立ちます。緑地を地域へ開放することで、近隣の幼稚園児の散歩や地域の子どもの自然体験など、緑をきっかけとした地域交流が生まれ、地域からの好意的な評価につながっている例もあります。
さらに、都心部のオフィスを貸し出すときには、環境への配慮を重視する企業からの緑豊かな環境が高く評価される例などもあります。

編集部

つまり、緑地確保による社会への貢献自体が民間事業者の価値となり、メリットになるということですね。TSUNAG認定を取得すると、緑地の量や質の高い取組を行っていることを誰にでも分かる形で示せますから、民間事業者としての価値をさらに高めることが期待できますね。

横山さん

はい、TSUNAGは、民間事業者等による緑地確保の価値・効果を「見える化」するためのツールと言えます。取組の価値が第三者にも分かりやすくなることで、投資家や金融機関、テナントなどからサステナビリティの観点で評価を受けやすくなり、民間投資の呼び込みにつながることを期待しています。このほか、TSUNAG認定を取得していると、緑地の整備に対する無利子貸付や補助金など、国による財政支援も活用できます。

編集部

財政支援を受けられれば、初期投資のハードルが下がりますね。すでに認定を取得した事業はあるのでしょうか。

横山さん

2024年度・2025年度で19件が認定を受けています。トリプル・スターが12件、ダブル・スターが3件、シングル・スターが4件になります。

■TSUNAG認定を取得した事業の例

●トリプル・スターに認定された事業①

上段(左から):新柏クリニック、竹中技術研究所(調の森 SHI-RE-BE)、大手町タワー(大手町の森)
下段(左から):アークヒルズ、赤坂インターシティAIR、麻布台ヒルズ

トリプル・スターは、緑地の割合が敷地面積の30%以上、かつ緑地の質の評価が150点満点中100点以上の事業を対象としています。

●トリプル・スターに認定された事業②

上段(左から):東京ポートシティ竹芝オフィスタワー、BLUE FRONT SHIBAURA、MUFG PARK
下段(左から):KX-FOREST KARUIZAWA 鹿島軽井沢泉の里保養所、グラングリーン大阪、新梅田シティ

●ダブル・スター、シングル・スターに認定された事業

上段 ダブル・スター(左から):大丸有地区(ホトリア広場・一号館広場・丸ビル外構)、赤坂七丁目2番地区第一種市街地再開発事業、
大成建設技術センター(TAC.T FOREST)
下段 シングル・スター(左から): MFLP・LOGIFRONT 東京板橋、シチズン時計 東京事業所(CITIZENの森)、イオンモール草津、BRANCH神戸学園都市

ダブル・スターは緑地の割合が敷地面積の20%以上30%未満で緑地の質の評価が150点満点中75~99点の事業、シングル・スターは緑地の割合が10%以上20%未満で緑地の質の評価が50~74点の事業をそれぞれ対象としています。ランクの付与においては、各ランクに該当する緑地の量・質両方の条件を満たす必要があり、例えば、緑地の割合が25%でも、質の評価が60点の場合はシングル・スターになります。

TSUNAG認定の計画期間は5年間で、希望すれば審査を経て更新が可能。また、認定後は、事業者は1年ごとに定期報告をする必要があります。

世界で通用するツールとして、国際的な基準と連動

編集部

近年は世界的にSDGsへの配慮が高まっていますが、TSUNAGは国際基準と連動はしているのですか。

横山さん

はい、TSUNAGは、事業者の取組が国際的にも評価されることを目的とし、国際的な自然関連情報開示の動きや基準と連動しています。
はじめに、企業・団体が自身の経済活動による自然環境への影響や自然保護への取組を投資家へ開示するための国際的な枠組み「TNFD」のガイドラインに位置付けられています(2025年1月公表)。これにより、TSUNAGの認定取得を、TNFDのガイダンスに位置づいているものとして情報開示・広報することが可能となっています。
また、不動産会社やファンドの環境配慮を、第三者が企業単位で評価する国際的な基準である「GRESB」の評価項目のうち、「グリーンビル認証(※)」としてTSUNAG認定が位置づけられています(2025年4月より適用)。そのため、TSUNAG認定の取得が、企業のESG評価を高めることが期待できます。
※GRESBが承認する環境に配慮した個別の物件の認証。

編集部

欧米では、気候変動や生物多様性の損失を事業存続に関わるリスクとして捉える動きが広がり、投資家にとっても環境への配慮は投資判断の重要な要素の一つになりつつあると聞きました。こうした流れの中で、TSUNAG認定は環境への取組を示す一つの材料として、グローバル企業にとっても頼りになるツールになりそうですね。取得するにはどうすればいいのでしょう。

横山さん

申請にあたっては、計画の詳細が分かる植栽図などの提出が必要になります。2026年4月より事前相談期間を設けていますので、関心のある民間事業者等の方は、『TSUNAG』のサイトからお気軽にご相談いただければと思います。

編集部

最後に、「TSUNAG」という名称の由来を教えてください。

横山さん

緑の持つ様々な価値を見える化することで、緑と人々・緑と都市・緑と社会・緑同士の「つながり」を生み出し、未来につなげていく。
そんなビジョンから、この制度の愛称を「TSUNAG」にしました。認定事例及び制度の積極的な周知・広報活動を通じ、この「つながり」をさらに広げ、緑豊かな都市の実現を目指していきたいと思います。

編集部

最近のオフィスビルや商業施設には緑の空間が設けられていることが多く、仕事や人混みで疲れた時に立ち寄ると、ほっとします。緑地の整備・管理に取り組んでくださっている企業・団体の皆さまには、心から感謝の気持ちをお伝えするとともに、これからも応援していきたいと思います。本日はありがとうございました。

TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)は、企業が自然に関連する財務情報を評価・開示する枠組みを構築するために設立された国際的な組織。

GRESBは、不動産企業等のESG(Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス/企業統治))への配慮を企業単位で評価する国際的な基準。

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