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知る人ぞ知る取組からちょっと意外なお仕事まで

公開日:2026/2/13

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運輸安全委員会

航空・鉄道・船舶の事故原因を徹底究明

事故等の再発を防いで運輸の安全を守る

discovery Repo

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航空、鉄道、船舶といった交通機関、輸送網の発達は、スピーディーかつ大量の人や物の行き来を可能にし、社会の発展に大きく貢献してきました。その一方で、事故が発生した際の被害が甚大になることもあり、過去には多くの方が犠牲になった「日本航空123便墜落事故」(1985年)、「JR福知山線脱線事故」(2005年)などが起こっています。こうした事故を可能な限り未然に防ぎ、被害を最小限に抑えるためには、原因を徹底的に追求し、二度と同じような事態を招かない対策、被害の軽減に必要な対策を考えることが必要です。そこで2008年に設立されたのが「運輸安全委員会」。国土交通省の外局で、事故の責任追及ではなく、原因を究明し、再発防止策・被害軽減策の実施を関係機関や関係者に求める独立性の高い機関です。今回は、この運輸安全委員会の活動内容についてご紹介します。

私たちが紹介します

「運輸安全委員会」って?

運輸安全委員会とは、航空、鉄道、船舶の事故等(事故・重大インシデント(※))の原因や、事故による被害の原因を究明するための調査を行う機関であり、航空事故等を専門に扱う常設の調査機関として1974年に発足した「航空事故調査委員会」、鉄道事故等の調査機能を追加し2001年に発足した「航空・鉄道事故調査委員会」をその前身としています。その使命は、調査結果に基づいて再発防止策、事故が起こった場合の被害の軽減策を提言し、運輸の安全性の向上を図るものです。
運輸安全委員会の組織は、委員長及び12名の委員と事務局職員から構成されています。委員長と委員は、各分野の高度な専門知識を有し、科学的かつ公正な判断を行うことができる者で、国会の同意を得て任命(任期は3年)され、調査方針を指揮するとともに、調査報告書案の内容、国土交通大臣・関係行政機関の長・関係者へ求める施策・措置などをそれぞれの専門的立場から合議により検討し、決定する役割を担います。
事務局は、この検討に必要な事実情報の収集、解析などを行います。現在、職員数は181名(2025年4月1日現在定員)です。他にも、被害者の対応、関係行政機関との調整、国際的な連携、事故等調査の統計・分析なども担当しています。
※事故が発生するおそれがあると認められる事態  

事故等の調査の流れは?

Step1 調査官を現地に派遣して事実調査

事故等が発生したら、事務局の調査官を速やかに現場に派遣します。航空事故等の場合は航空事故調査官、鉄道事故等の場合は鉄道事故調査官、重大な船舶事故等の場合は船舶事故調査官が担当します(※)。調査官は各分野の技術開発や実務に携わってきた、豊富な専門知識と経験を持つエキスパート揃いです。調査では、事故現場の状況や機体・車両・船体の状態の確認、関係者からの聞き取り、関係資料の収集などの多岐にわたる事実調査を行います。事故等は、いつ、どこで起きるか分かりませんし、事故等の痕跡は時間の経過とともに変容・消失してしまうことがあります。また、事故等によって通勤・通学など多くの方の日常生活に大きな影響が生じる場合もあります。そのため、調査官はできる限り早期に調査に取り掛かる必要があり、事故が起きれば、休日、夜間を問わず、ときには雪山などの過酷な現場に向かうこともあります。
※重大な船舶事故等以外の船舶事故等の場合は、発生場所を管轄する地方事故調査官が担当します。

墜落事故の現場へ向かう調査官(左上)、船舶の火災事故の調査(左中)、航空事故の調査(右上)、脱線事故の調査(下)

Step2 収集したデータを解析

事故状況を把握するためには、事実調査において客観的なデータを収集し、解析することが重要です。航空機には飛行記録装置が搭載されており、鉄道や船舶にも運転状況や航海情報の記録が残されている可能性があります。このほか、スマートフォンや現場付近の監視カメラに当時の映像やデータが記録されていることもあり、事実把握の手掛かりになります。
また、現場調査ではドローンによる空撮や3Dスキャン装置により事故現場の3Dモデルデータの取得も行っています。事故現場の3Dモデル化は、状況把握や詳細な分析が可能となり、事故調査で高い効果を発揮しています。

音声記録の解析(左上)、アニメーションによる状況の再現(右上)、フライトレコーダー(下)

ドローン(左上)、現場調査でのドローンの飛行(右上)、3Dスキャン装置(左下)事故現場の3Dモデルよる事故状況の分析(右下)

Step3  調査報告書案を作成し、委員会が審議

収集・解析した情報を基に、調査官が事故原因の分析、再発防止策の検討を進め、調査報告書案を作成します。そして、その案について委員会による審議が行われます。委員は、各分野の高度な専門知識を持つ精鋭揃いであり、多くの専門分野からの多角的な視点で、調査報告書の内容について極めて高度な専門的議論を行います。委員会で調査報告書案がまとまると、原因関係者への意見聴取などの手続を行ったうえ、調査報告書として議決します。

委員会による調査報告書案の審議。

Step4 調査報告書の提出・公表

議決した調査報告書は国土交通大臣に提出するとともに、運輸安全委員会のWebサイトで公表します。この際、必要に応じて、国土交通大臣又は原因関係者への勧告、また、国土交通大臣又は関係行政機関の長に意見を述べることにより、必要な施策又は措置の実施を求めることもあります。こうして公表した調査報告書は、事故の教訓を社会全体で共有し、再発防止のための仕組みづくりへと繋がっていきます。

調査報告書には、事故等調査の経過、事実情報、分析、結論、原因、再発防止策などを記載。

事故調査だけじゃない! 運輸安全委員会の取組

運輸安全委員会では、個々の事故調査だけでなく、運輸の安全性の向上のために様々な取組を行っています。

① 国際協力の促進
運輸安全委員会の調査対象となる事故等の中には、航空や船舶のように国を越えて行き来するものがあるため、事故調査の制度等を定める国際機関や海外の事故調査機関との協力・連携が不可欠です。また、各国・地域との事故調査手法の情報共有、事故発生時の国際協力、再発防止策の実効性向上等の観点で、委員長レベルから実務者レベルまで種々の国際会議が開催されています。運輸安全委員会もこれらに積極的に参加しています。このほか、海外の事故調査機関から要請があった場合には、各種技術協力にも対応しています。
航空や船舶の事故等調査では、ICAO(国際民間航空機関)やIMO(国際海事機関)という国際機関による公的枠組みがありますが、鉄道の事故等調査に関しては、国際的な意見交換等を行う場は限定的でした。そこで、世界の鉄道事故調査機関等における情報交換やさらなる関係発展を目的として「国際鉄道事故調査フォーラム(RAIIF)」を運輸安全委員会が中心となって立ち上げました。2024年10月に東京で開催された第1回フォーラムでは、11の国・地域の調査機関や鉄道事業者が参加し、調査事例や安全に対する取組について活発な議論を交わしました。
このように、航空・鉄道・船舶事故等調査関連の国際会議に積極的に取り組むことによって、世界の運輸の安全性向上に日本が貢献し、国際的なプレゼンス向上が図られています。

② 調査能力の向上
より科学的で高精度な事故調査を行えるように、運輸安全委員会では、新技術の導入を積極的に進めています。例えば、X線CTスキャン装置を活用して、透過画像から調査対象物品の内部構造を詳細に把握することが可能です。また、ワイドエリア3次元測定機の導入により、調査対象物品をマイクロメートル単位の精度で3Dモデル化して、破損状況等を精密に把握することが可能となっています。
また、運輸安全委員会では、職員の調査スキル向上のための取組も行っています。例えば、外部専門家による航空機デジタルデータ研修、無人航空機の技量を養成する訓練、積極的なOJTを実施しているほか、各種マニュアルの整備にも力を入れており、技術の伝承を図っています。

③ 安全啓発のための情報発信 運輸安全委員会では、事故調査の結果を事故防止につなげるために、様々な形で情報発信を行っています。例えば、過去の調査結果を特定のテーマでまとめた『運輸安全委員会ダイジェスト』、Webページ上の地図に過去の事故やリスク情報などを表示できる『船舶事故ハザードマップ』などを作成し、運輸安全委員会のWebサイトで紹介しています。また、学校や自治体など公共性・公益性のある団体・機関を対象に、事故等調査に関する業務を更に深く知っていただくため、運輸安全委員会の職員を派遣する『出前講座』も行っています。 運輸安全委員会のWebサイトには、これらの安全に関する情報等を豊富に掲載しており、公式SNS(X)や毎月1回発行するメールマガジンでも最新の情報を発信していますので、是非ご利用ください。

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