こんなところに国交省
知る人ぞ知る取組からちょっと意外なお仕事まで
公開日:2025/12/17
file 017
自然災害伝承碑
先人の教えを受け継いで
防災・減災を実現する
自然災害を引き起こす大雨は増加傾向!
2015年~2024年に1時間降水量50㎜以上の大雨が降った回数は、1976年~1985年の何倍?
約1.3倍
約1.5倍
約1.8倍
答えはこちら
約1.5倍
洪水、土砂災害、地震など、近年の日本では毎年のように大規模な自然災害が起こっています。もともと日本は国土の約7割が山地・丘陵地で氾濫しやすい急勾配な河川が多かったり、111の活火山を抱える世界有数の火山国であったりと、災害が発生しやすい条件が揃っています。そこに地球温暖化による気候変動が加わり、自然災害はさらに頻発・激甚化。例えば大雨の場合、2015年~2024年の10年間と約40年前の1976年~1985年の10年間を比較すると、1時間降水量50㎜以上の雨が降った回数は約1.5倍、100mm以上の雨は約1.8倍も増加しています(気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」)。自然災害への備えは、今後ますます必要になっていくでしょう。
過去からのアドバイス「自然災害伝承碑」って?
自然災害に備える方法のひとつとして、国土地理院では2019年から「自然災害伝承碑」の「地理院地図」等への掲載を開始しました。自然災害伝承碑(以下、伝承碑)とは、津波、洪水、火山災害、土砂災害などの自然災害に見舞われた際に先人が後世のために遺した石碑やモニュメントのことです。一般に、発生年月日、災害種別、範囲、被害内容や規模などが書かれています。被災場所に建てられていることが多く、また、地形などの関係で、自然災害は同じ場所で起こりやすい性質がありますから、伝承碑は過去からの貴重なアドバイスと言えるでしょう。
しかし、年月とともに地域住民の関心が薄れてしまった伝承碑も少なくありません。「平成30年7月豪雨」では、多くの犠牲者が出た地区には、100年以上前の水害を伝える伝承碑がありましたが、地域住民にその内容が十分に伝承されていませんでした。このような経験から、国土地理院では伝承碑の情報を収集、公開し、過去の自然災害の記録や教訓などを確実に後世に伝えることを目指します。

平成30年7月豪雨の災害現場。向かって右上に、1907年に起こった洪水・土石流を伝える伝承碑がある(提供:大阪府警察)。

「自然災害伝承碑」はどんなふうに活用できる?
<例1>災害リスク情報と組み合わせる
国土交通省水管理・国土保全局と国土地理院では、伝承碑の情報とハザードマップで使用される災害リスク情報とを組み合わせた地図(重ねるハザードマップ)を用意しています。災害リスク情報と伝承碑の内容を照らし合わせることで、今後その地域でどんな災害が起こる可能性があるのかをイメージできますから、地域住民の危機意識を高め、防災・減災活動を浸透させる上で役立つはず。万一の場合にも、適切な避難行動を期待できるようになるでしょう。

洪水・内水の災害リスク情報と組み合わせた一例(黄緑色のマークが伝承碑)。
左下は伝承碑の地図記号。
<例2>災害リスクのある地形を知る
国土地理院の「イラストで学ぶ過去の災害と地形」では、過去の自然災害と地形、その近辺の伝承碑を紹介し、災害の危険性がある地形とはどういうものかを学べる構成になっています。リスクの高い地形の特徴が分かるようになれば、類似した地形を見た時に「ここは危険!」とピンと来るようになるはず。アウトドアを楽しむ時や、マイホーム購入時の場所選びなどでもきっと役に立つでしょう。誰もが内容を理解しやすいように、できるだけ専門用語を使わずに作成された解説画像がありますので、まずはその画像で地形と自然災害の関係についてチェックするのがおすすめです。

災害と地形の解説画面。
自然災害伝承碑の情報&活用事例を募集中!
2019年、国土地理院が伝承碑を地図に掲載し始めた当初は、その数は158基でした。しかし、2025年11月27日現在、掲載されている伝承碑は2,398基にまで増加。伝承碑を巡るイベントを開催する自治体があったり、授業の教材として伝承碑を取り上げる学校があったりと、防災・地理教育に活用される機会も増え、伝承碑の価値は着実に浸透しつつあります。これらの活用事例は国土地理院のサイトでもご紹介していますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
伝承碑の情報をさらに充実したものにするために、もし未登録の伝承碑がありましたら、各地の国土地理院の地方測量部などにお気軽にご連絡いただければと思います。また、「うちは伝承碑をこんなふうに活用しています」という取組についてのご報告もお待ちしています。

広島県福山市立熊野小学校では、児童が伝承碑の調査結果を市の担当者へ報告し、地理院地図への掲載につながった。

和歌山県土砂災害啓発センターが公開した伝承碑等とともに過去の土砂災害・水害を紹介する動画。