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公開日:2024/9/27

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地籍調査

資産の保全はもちろん、災害復旧にも必要不可欠!


土地の情報を正確かつ最新のものに更新する

discovery Repo

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みなさんは自分が所有する土地について、登記簿や土地の位置や形状を示す図面を直接見たことはありますか。これらの土地の情報は法務局が管理しているものですが、土地の位置や形状を示す図面の約半分は、明治時代に作られた地図(公図)に基づく100年以上前の情報だということをご存じでしょうか。そのため、実態とズレがあることも多く、現在の測量技術で精度の高い図面に更新するために行われているのが「地籍調査」です。今回は、この「地籍調査」についてご紹介。ちなみに、「地籍」とは土地の所有者、用途、面積、境界の位置などの情報のことで、いわば「土地の戸籍」です。

私たちが紹介します

まずは「地籍調査」の現状をチェック!

地籍調査がスタートしたのは、第二次世界大戦後の1951年。戦争で疲弊した日本を再建するために、限りある国土を有効活用できるように整備しようとして始まりました。 しかし、細かく分割された土地が多い都市部、足場の悪い土地が多い山村部など、スムーズに進まない地域も多く、2023年度末時点での進捗率は全国平均で53%(『全国の地籍調査の実施状況』国土交通省)。地域によっても大きく異なり、北海道、東北、九州では90%を越える県もあるのに対し、関東、中部、北陸、近畿は大半が40%未満です(下表参照)。開始から70年以上経過しても未だ多くの未調査地区が残る中で、近年は調査の加速化が重要な課題となっています。 なお、お住まいの地域の地籍調査実施状況は『地籍調査状況マップ』(国土交通省)から確認することができます。  

地籍調査は安全&安心な社会実現のカギ

地籍調査が必要とされる主な理由は、次の5点です。
特に近年は、毎年のように自然災害による深刻な被害があり、南海トラフ地震、首都直下地震の発生も高い確率で予測されていますから、万一の際のスムーズな復旧のためにも調査の加速化が望まれています。また、正確な緯度経度情報を有している地籍調査の成果はオープンデータ(※)として様々なサービスの情報基盤として活用されています。
※登記所備付地図がG空間情報センターにおいて一般に無償公開中

➀土地取引の円滑化

土地の境界を示す標識

地籍調査により土地に関する情報が正確なものに更新されますから、例えば、お隣との境界をお互いに納得した上で登記情報が更新されます。その結果、土地の境界をめぐるトラブルを未然に防止でき、土地を売買する際にもスムーズに進めることが可能になります。

②迅速な災害復旧・復興

地籍調査を実施していない地域では、被災下で所有者の探索を行わなければならないことに加え、元々の境界が不明確な状況で境界の確認を行う必要があり、復旧・復興事業に着手する前に多くの時間と手間が必要となるケースも(画像はイメージです)。

災害が発生した場合、道路の復旧、上下水道等のライフライン施設の復旧、住宅の再建などが急務となります。地籍調査が実施されていた場合は、土地の境界を示す杭が無くなったり、移動したりしてしまった場合であっても、地籍調査の成果を使って、土地の所有者に連絡を取ったり、現地に元の境界を復元することが可能となり、迅速な復旧・復興につながります。

③社会資本整備・まちづくりの円滑化

都市開発等の活性化にも地籍調査は重要な役割を果たす。

道路整備、都市空間を再構築する市街地再開発事業、宅地建設等の民間開発事業などを進めていく際にも、地籍調査により境界が明確になっていれば用地取得等をスムーズに進めることができ、円滑に事業が実施できます。

④適切な森林の管理

適切な森林整備のために地籍調査は重要。

森林は、地球環境の保全、土砂災害の防止、水源のかん養(雨水を吸収・ろ過して貯水したり、河川の流量を調節する働き)など私たちの生活に不可欠な機能を有しています。これらの機能を発揮するには、間伐(過密にならないように一部の樹木を間引くこと)等の森林施業を行う必要があります。森林の境界が明確になっていれば、適時適切な対応をとることができます。

⑤所有者不明土地対策

適切に管理されていない所有者不明の土地(画像はイメージです)。

地籍調査によって土地の所有者や境界等を明確にすることは、適正な土地の利用・管理の基礎データの整備につながることはもちろん、所有者不明の土地の発生を抑制する効果が期待できます。

地籍調査の円滑化に向けて新制度がスタート!

地籍調査では土地所有者の方々に土地の境界を現地に立ち会って確認いただいたうえで、測量を実施します。この現地立会については、調査主体である自治体からの通知等に応答いただけない場合に周辺の土地を含めて境界を調査できないことが課題となっていました。 このため、令和6年7月から新しく『土地境界のみなし確認制度』がスタートしました。現地立会等の実施に先立って送付される通知に土地所有者の方から応答がない場合、筆界案(境界と推定される位置を図面等に示したもの)を送付し、一定期間を経て意見の申出がない場合は土地境界の確認が得られたとして調査を進めることができることになるものです。 通知を受け取りましたら、必ず内容を確認のうえ、調査にご協力いただきますようお願いいたします。

地籍調査の加速を最新技術でサポート!

地籍調査の中でも特に進捗が遅れている都市部・山村部をスムーズに調査できるように、様々な技術を導入して効率化を図っています。

MMSとは車載写真レーザ測量システム(モービルマッピングシステム:Mobile Mapping System)のことです。車両にGNSS(人工衛星を利用して地上の現在位置を計測するシステム)、3Dレーザスキャナ、デジタルカメラ等を搭載し、街中を走行することで、道路と道路周辺の3次元データ等を取得。都市部の効率的かつスピーディーな測量が実現します。
(写真:街中を走りながら3次元空間情報を取得できるMMS測量(『地籍調査におけるMMS活用動画』地籍チャンネル)

軽飛行機やヘリコプター、ドローン等による航空レーザ測量等、離れた場所から対象に触れることなく計測したデータを「リモートセンシングデータ」といいます。このデータを地籍調査に活用すれば、現地に赴いての測量等は必要最低限でOK。危険な場所や広大な土地が多い山村部の調査にかかる時間やコストを大幅に削減できます。 (画像/リモートセンシング技術の活用により効率的な地籍調査が実現)

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