こんなところに国交省
知る人ぞ知る取組からちょっと意外なお仕事まで
公開日:2024/8/15
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海図
安全&スムーズな航海のために
海の最新情報を調査・発信
海洋国 日本
1年間に入港する船舶数は?
約248万隻
約306万隻
約501万隻
答えはこちら
約306万隻
2022年に日本の港に入港した船舶(総トン数5トン以上)は306万2,026隻。これだけ多くの船が安全に航行、入出港するために不可欠なものが「海図」です。港湾工事や地震など、様々な理由で変化する海を安全に航行するための必須アイテム「海図」について、今回は紹介します。
「海図」って?
「海図」とは海の地図のことです。広い大海原は一見、自由に航行できそうに見えますが、海面下に岩や珊瑚が隠れていたり、潮流の速い箇所があったりと、実際は思っている以上に危険がいっぱい。そこで、安全な航海のために海の道を記したものが作られるようになり、13世紀に中国からヨーロッパに羅針盤が伝えられたことで大きく発達したといわれています。現代の海図には水深、潮流の速さや方向、沈没船などの障害物、目印となる灯台の位置などが詳しく記載され、航行をする際に備え付けることが国際的に義務付けられています(SOLAS条約)。 この海図を日本で作製、刊行しているのは、海上保安庁海洋情報部です。一連の業務は「水路業務」と呼ばれ、日本の領海はもちろん、南極地域観測隊に参加して昭和基地周辺の海図も作製。JICA(独立行政法人国際協力機構)と協力して開発途上国の海図作製能力向上のための研修なども行い、世界の航海の安全に広く貢献しています。 また、船舶が安全に航海するには、「海図」の内容が最新となっていることが重要です。海上保安庁では、海図を最新に維持するための情報を掲載した水路通報をインターネットで毎週提供しています。
測量船搭載艇による調査の様子(左上)、自律型潜水調査機器(AUV)を用いた精密地形調査(右上)、測量船による調査時の船内の様子(左下)、海図の作製の様子(右下)
どうやって作製するの?
音波やレーザーを利用して海底の地形を調査
海図の作製のために、海上保安庁では測量船や航空機を使って、海底や海岸の地形などを調査しています。これを「水路測量」といい、測量船から海底に向けて音波ビームを放つことで海底地形を調査し、測量船が進入できない浅い海域では航空機からレーザー光を発射して、水深を測ります(図参照)。他にも港湾の調査などで得られた資料を使用して海図を作製します。
水路測量の図
ちなみに、昭和20年代までは、水深は錘(おもり)をつけたロープを垂らして測っていたのだとか。
海図にも電子化の波。海洋情報を気軽に活用できる「海しる」も
海上保安庁では紙の海図だけでなく、海図情報を電子化した「航海用電子海図」も刊行しています(画像参照)。外航船への搭載義務化や使い勝手の良さから、利用者は急増中。また、海上保安庁は収集したデータを「海洋状況表示システム(愛称:海しる)」にも掲載しています。これは各府省庁が収集・保有している海洋情報を広く一般に公開するWebサービスで、水温、潮流、天気図など250項目以上の情報を用意。選んだ項目が地図上に表示できるため、漁業、レジャー、海洋開発、海運など、様々な場面で活用されています。
航海用電子海図
「水路測量」のスキルで大災害に立ち向かう
地震が発生すると、道路、鉄道といった陸路はもちろんですが、海路も大きな影響を受けます。2011年3月11日に起こった東日本大震災や2024年1月1日に起こった能登半島地震では、測量船を緊急派遣して港内の障害物調査を実施し、航路の安全を確認して支援物資を供給するための海上の輸送ルートの確保につなげました。
震災における海上保安庁の支援活動
測量船搭載艇で水深や海底障害物の有無を調査し、航路を確保。
調査したデータを解析し、沈んでいる障害物の場所や大きさを関係機関に知らせることで、港までの安全な航路を確保する。