こんなところに国交省

知る人ぞ知る取組からちょっと意外なお仕事まで

公開日:2024/4/17

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官庁営繕

庁舎から国宝、世界遺産まで

最新技術で国の建築物をアップデート

discovery TALK

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国土交通省
官庁営繕部計画課
加藤係長

 国の施設の「営繕えいぜん」について教えてもらいました。

資材や構造によって違いはあるものの、どんな建物も時間が経てば傷んできますし、改修、建替えが必要です。国の建築物も同様で、それを担当しているのが国土交通省の官庁営繕(大臣官房官庁営繕部(本省)と地方整備局等営繕部)。具体的にどんな活動をしているのか、Grasp編集部が官庁営繕部計画課の加藤係長を訪問、いろいろ教えてもらいました。

時代のニーズに合わせて
約4,300施設を整備&保全

編集部

部署名にある「営繕」、あまり聞きなれない言葉ですが、どういう意味でしょう。

加藤係長

「営繕」とは、建物の新築工事、増改築工事、改修工事や模様替えのことです。私たち官庁営繕は国の建築物の「営繕」を担当しており、他の省庁が利用している建物でも私たちが対応しています。事業の実施が決まると、建物の設計者や工事の施工者と建物を使用する省庁との間に立って、安全かつスムーズに完了するようにマネジメント。事業の実施は各省庁から寄せられる要望を踏まえて決まる場合もあれば、私たち官庁営繕職員が行う各施設の調査をきっかけに決まる場合もあります。

編集部

国の建築物というと、たとえば、国立の美術館や図書館、霞が関の各省庁の合同庁舎でしょうか。全国でどれくらいの数があるのでしょう。

加藤係長

霞が関に限らず、全国各地の各省庁の庁舎をはじめ、美術館、図書館などの教育文化施設、研究施設、社会福祉施設などで、約13,000施設あります。ただし、官庁営繕がそのすべての営繕を対応するわけではなく、防衛施設、刑務所などの特殊な施設や、工事の規模が小さい場合は、各省庁が対応するため対象外です。私たちが実際に手掛けるのは4,300施設程度。たとえば、今までにこんな施設の営繕を行ってきました。

官庁営繕が行った営繕の例

1.迎賓館赤坂離宮(東京都港区)

1906年 建築。2006~2009年 平成の大改修。2009年 国宝に指定。

耐震補強、給排水設備、空調設備、通信設備などの改修を実施。内装には手織り緞通だんつう、金箔押し、石工装飾、紋ビロード織といった第一級の工芸美術が使用されているため、一流の職人により修復・改修しました。先人の素晴らしい技術を守り、次代へとつないでいくのも官庁営繕の役割のひとつです。

2.国立西洋美術館 本館(東京都台東区)

1959年 建築。1998年 耐震改修(免震化)。2007年 国の重要文化財に指定。2016年 世界文化遺産に登録。

国立西洋美術館 本館の免震化では、日本で初めて「免震レトロフィット」を採用しました。これは、既存の建物の基礎などに免震装置を設置することで、建物のデザインや機能を損なうことなく地震対策ができる補強方法。ル・コルビュジェの建築作品の美しさを守るための選択で、この免震レトロフィットによって守り続けられた建築物の歴史的・文化的価値が認められ、2016年に世界文化遺産に登録されました。

3.横浜税関 本関(神奈川県横浜市)

1934年 建築。2001~2003年 平成の大改修。2001年 横浜市認定歴史的建造物に認定。2010年 公共建築賞受賞。

「クイーンの塔」の愛称で長年親しまれている横浜税関 本関。横浜港のシンボルとして市民に親しまれている都市景観への配慮から、改修・増築にあたっては、街路に面する建物の3方をそのまま保存・活用し、景観への影響が少ない残る1方に増築するなど、「新旧の対比と調和」というコンセプトでデザインし、道路側から観た外観に極力手を加えないよう配慮しました。

4.大手前合同庁舎(大阪市中央区)

2022年 建築。官庁施設で初めて「ZEB Oriented」に認証。

「ZEB」とは「Net Zero Energy Building」の略で、太陽光発電などの創エネ技術により、エネルギー消費量の収支をゼロにする建物の総称。高効率設備の導入などにより40%以上の省エネを実現した大手前合同庁舎は、「ZEB Oriented」(エネルギー消費量の削減が30~40%以上を実現する建物)に認証されました。

5.首相官邸(東京都千代田区)

出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/

2002年 建築。

1929年に建てられた旧首相官邸の老朽化により新築。迎賓機能や会議室などの充実を図り、危機管理センターも設置しています。旧官邸は曳家ひきや(建築物を解体することなく、そのままの状態で移動させる工法)・改修の後、現在は総理大臣公邸として使用。こちらも官庁営繕が対応しました。

公共建築分野のリーダーとして、
技術や環境の整備を推進

編集部

すごいラインアップですね! 業務の内容も、歴史ある建物の改修から最先端の機能を備えたビルの建築まで幅広いです。

加藤係長

少々ユニークなところでは、2005年に開催された日本国際博覧会(愛・地球博)の「日本館」、2016年の伊勢志摩サミットの報道拠点として建築された「伊勢志摩サミット国際メディアセンター アネックス」も私たちの仕事です。どちらもイベントのための期間限定の建築物で、主に環境配慮型の資材、機材を採用。解体後は、資材や機材はリサイクル、リユースされました。
もちろん、こうした象徴的な建築物ばかりではなく、たとえば、各地の税務署やハローワークの営繕も私たちが手掛けています。

日本国際博覧会(愛・地球博)「日本館」(愛知県長久手市)

伊勢志摩サミット国際メディアセンター アネックス(三重県伊勢市)

編集部

なんだか、ぐっと身近に感じるようになりました。ほかには、どんな業務をされているのでしょう。

加藤係長

私たちには公共建築分野のリーダーとしての役割もありますので、窓口を設けて、自治体や民間発注者からの公共施設に関する質問や相談に対応しています。その数は年間約2,100件にものぼります。
また、2024年の4月からは建設業界の働き方改革がより一層進められます。受注事業者の働き方改革に配慮した上で工事を進められるよう、適切な工期の設定など、営繕事業における様々な働き方改革の取組をパッケージ化して実施しています。

編集部

国の建築物をはじめとする公共建築は、私たち国民の生活の様々なシーンで重要な役目を果たしていますね。それを造り、守る官庁営繕のお仕事、これからもよろしくお願いいたします。

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