こんなところに国交省
知る人ぞ知る取組からちょっと意外なお仕事まで
公開日:2025/8/26
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気候変動情報
気象や海洋を日々観測し、情報発信!
気候変動対策を支える縁の下の力持ち
気候変動対策待ったなし!
地球温暖化の進行を抑える対策を強化しなかった場合、21世紀末の日本の年平均気温は20世紀末から何℃上昇する?
!ヒント!20世紀初頭から20世紀末までの間に、約0.6℃上昇しました。
約2.3℃
約4.5℃
約6.7℃
答えはこちら
約4.5℃
2015年、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP 21)において、全ての国に温室効果ガス排出削減目標の提出を求める「パリ協定」が採択されました。この協定が掲げる目標は「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をすること」です。もし、地球温暖化の進行を抑える対策(緩和策)を強化しなかった場合、21世紀末には、日本の年平均気温は20世紀末より約4.5℃(産業革命以前の水準に近い20世紀初頭からは約5.1℃!)も上昇すると予測されています(文部科学省及び気象庁『日本の気候変動2025』)。
そもそも「気候変動」って?
産業革命以降、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量が急増し、地球の平均気温が上昇しています(地球温暖化)。これに伴い、猛暑日や豪雨が増加するなど、気候に変化があらわれるようになってきました(気候変動)。
現在、温室効果ガス排出量削減などの緩和や、気候の変化に対応するための適応の取組が活発に行われています(右表参照)。気象庁は、こうした取組の検討・決定の基盤となる、気温や降水量など気候の諸要素に観測・予測される変化に関する情報(気候変動情報)を提供し、日本における気候変動対策の縁の下の力持ちとして重要な役割を果たしています。

近年の日本における気候変動対策に関する動き

「気候変動情報」を提供するために、何をしているの?
➀100年以上にわたり、気候に関するデータを収集
気象庁では長年にわたり気象、海洋および地球環境について観測を行い、様々なデータを収集しています(ちなみに日本の気象業務は、2025年6月で150周年を迎えました)。日本の気候の変化傾向を把握できるのも、こうしたデータの蓄積があるからこそです。例えば、100 mm以上の雨が降る日は、1901~1930年の平均では年間約0.84日だったところ、1995~2024年の平均では年間約1.18日と、約1.4倍に増えていることが分かりました。さらに、IPCC(※1)報告書と同じ温室効果ガス排出シナリオ(※2)を用いて、日本の気候の将来予測も実施しています。
※1「Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)」の略。世界中の科学者の協力の下、気候変動に関する科学的知見の評価を提供している。
※2人間活動に伴う大気中の温室効果ガス濃度の変化を仮定したシナリオ。将来気候の予測に使われる。

②必要な情報がすぐ見つかる! 「気候変動ポータル」
2018年の「気候変動適応法」成立を受け、国はもちろん、地方公共団体や事業者でも、具体的な適応策が検討・実施されるようになりました。気候変動の影響で自然災害の激甚化・頻発化が深刻になっていることから、国土交通省でも、気候変動に適応できる社会の形成を目指しています。例えば、気候変動の影響を踏まえた治水計画の見直しや流域治水の加速化・深化など、ハード・ソフト一体となった対策や、都市の暑熱対策などを進めています(国土交通省環境行動計画)。
こうした具体的な対策には裏付けとなるデータが不可欠で、気象庁の気候変動情報や、それをまとめた報告書もその1つです。気象庁では、必要なデータを入手しやすいよう、気候変動コンテンツのリンク集「気候変動ポータル」を開設し、各種統計、解析資料から、最新の動向・知見、データの活用例まで、スムーズにアクセスできるようにしています。

気象庁ウェブサイト内の気候変動コンテンツを集めた「気候変動ポータル」。
まずは『日本の気候変動』をチェック!
国、地方公共団体、事業者等による気候変動対策をサポートすべく、気象庁は文部科学省と共同で、日本及びその周辺の気候のこれまでの変化と将来予測をまとめた報告書『日本の気候変動』を作成しています。概要版、本編、詳細編の3タイプを用意していますので、知りたい情報の深度に合わせてご利用ください。「対策を強化しなかった場合、日本の気候はどうなる?」という方は、まずは概要版からチェックするのがおすすめです。
2020年に作成した『日本の気候変動2020』は、都道府県版リーフレットの情報も含め、関係省庁による有識者懇談会での検討材料や各種施策・計画実施の根拠として利用されたり、地方公共団体における気候変動適応計画で参照されたりしています。例えば「港湾における気候変動適応策の実装に向けた技術検討委員会」では、この報告書を背景の1つとして検討を行い、気候変動により将来にわたり高潮・高波等の外力が増加することを踏まえ、外力が経年変化することを考慮した設計とすること、官民の多様な関係者による協働防護を推進すること等の実装方針を2024年3月に取りまとめました。
2025年3月に公表した『日本の気候変動2025』も様々な分野で活用いただけるよう、引き続き解説・広報資料を充実させるとともに、セミナーなどの機会を通じて利用者との双方向のやり取りに努めてまいります。

気象庁ウェブサイトの『日本の気候変動』のページ。報告書はもちろん、使用されている図表やデータが「素材集」に掲載されており、独自の資料作成にも利用可能。都道府県別リーフレットが掲載されている「日本の各地域における気候の変化」のページからは、各地方や都府県で観測されている気候の変化や将来予測される気候の変化を確認することができる。解説動画は、「地球温暖化と将来予測」「気温」「降水」「海洋」の4つがあり、それぞれ5分程度で、概要版に基づき解説している。

気候の現状と将来予測が端的に分かる『日本の気候変動2025』概要版より、将来予測のまとめ